さて、この曲はなんて言ってるのだろう

英語は苦手ですが、洋楽を和訳しながらあれこれ意味を調べたり考えたりするのは好きなので、その勢いで書いています。
意訳と偏見だらけですが、ご容赦ください。

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Hark! The Herald Angels Sing / Traditional

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Lyrics&約

Hark! the herald angels sing

"Glory to the newborn King!"

Peace on earth, and mercy mild

God and sinners reconciled

 

聴け!天の使いの紡ぐ御歌を

新たな王に栄光あれ

地は安寧と慈悲に覆われ

咎人と神は歩み寄らん

 

Joyful, all ye nations, rise

Join the triumph of the skies

With th' angelic host proclaim

"Christ is born in Bethlehem."

Hark! the herald angels sing

"Glory to the newborn King!"

 

慶び満ちて諸人こぞれ

天の凱旋を共に参れ

聖なる宣主の声を刻め

主はベツヘレムでお生まれになった

聴け!天の使いの紡ぐ御歌を

新たな王に栄光あれ

 

Christ, by highest heaven adored

Christ, the everlasting Lord

Late in time behold him come

Offspring of the favored one

 

天の寵愛受けしキリスト

永遠に我らを導くキリスト

来たる時、彼の来たるを見給え

愛されし者の子の御姿を

 

Veiled in flesh, the Godhead see

Hail, th' incarnate Deity

Pleased, as man, with men to dwell

Jesus, our Emmanuel!

Hark! the herald angels sing

"Glory to the newborn King!"

 

聖なる衣を纏いし御体

やあ、神はこの世に舞い降りん

この人の世にぞ住まわれん

神よ、我らが救世主よ

聴け!天の使いの紡ぐ御歌を

新たな王に栄光あれ

 

Hail! the heaven born Prince of peace!

Hail! the Son of Righteousness!

Light and life to all he brings

Risen with healing in his wings

 

やあ、天に生まれし王の子よ

やあ、聖なる意志を継ぐ子よ

命を導く彼に光を

彼の翼に、癒され登らん

 

Mild he lays his glory by

Born that man no more may die

Born to raise the sons of earth

Born to give them second birth

Hark! the herald angels sing

"Glory to the newborn King!"

 

穏やかにして栄なる光

御生まれになった。永遠に続く命を持って

御生まれになった。地の子、我等を導く為に

御生まれになった。新たな命を与える為に

聴け!天の使いの紡ぐ御歌を

新たな王に栄光あれ

 

この曲について

 キリストの誕生の喜びを歌った曲で、日本では「天には栄え(あめにはさかえ)」と題されている讃美歌の一つです。新たな人間の王の誕生により、人々が迷うこと無く導かれていく、その期待が大いに込められていますね。

 

 讃美歌は大抵そうですが、場面展開と言うものが全くと言って良い程無く、ただひたすら主を讃えているだけとなっております。ただ、その神聖なるものを讃える言葉のバラエティは非常に多いので、是非一度目を通して頂けたらなと思って御紹介しました。

 

 さて、この曲は1739年には既に詩としては存在していたようですが、それが1840年にイギリスで讃美歌として作られたそうです。原詩は本当はもう少し長いのですが、讃美歌として歌われる場合は今回ご紹介した部分までのみとなります。

 

 キリストの誕生を歌った歌なので、クリスマスキャロルとしてもよく使われており、カバーしているアーティストも多くいますので、讃美歌では無くカバーバージョンでお聴きになった方もいらっしゃるのではないかなと思います。


 
Hark the herald angels sing

 

Maraiah Careyバージョン

Mariah Carey - Hark! The Herald Angels Sing / Gloria (In Excelsis Deo) [audio]


Blackmore's Night バージョン

Blackmore's Night - Hark The Herald Angels Sing / Come All Ye Faithfull

訳、言葉について

 Hark は、口語ではあまり使われ無い言葉で「聴け」という時に使う言葉だそうです。

 

 Herald は、「使者」を意味する言葉です。ただ、日本語で Angel が既に「天使」と使者の意味を含んでいるので、Herald angels でまとめて「天使」で良いと思います。

 

 Everlasting は、「永遠に続く」とか「不朽」という意味の言葉です。

 

 Godhead、Deity は、どちらも「神性」とか「神格」という意味の言葉ですが、単にそのまま「神」の意味として使用することもあるようです。

 

 dwell は「住む」を意味する言葉です。Live も同じ意味で使うことが有りますが、こちらは「居を構える」点に重点を置いた言葉のようです。

 

 Emmanuel は男性の名前ですが、救世主という意味を持たせることも出来るようです。また、Wikipedia によると、語源を辿れば「神は我らと共に」という意味になる名前だそうです。

We Wish You A Merry Christmas / Traditional

We Wish You A Merry Christmas / Traditional

 

Lyrics&訳

We wish you a Merry Christmas

We wish you a Merry Christmas

We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year

 

良きクリスマスが訪れますよう

今年もあなたに

クリスマスが、そして新しい年が訪れますよう

 

Good tidings we bring to you and your kin

Good tidings for Christmas and a Happy New Year

 

良き流れが訪れますよう。あなたとあなたの大事な人に

良き流れでこのクリスマスを、新年をまた迎えられますよう

 

Oh, bring us a figgy pudding

Oh, bring us a figgy pudding

Oh, bring us a figgy pudding and a cup of good cheer

 

さあクリスマスプディングを私たちに

クリスマスの伝統の

イチジクでできたプディングを食べて、乾杯しましょう

 

Good tidings we bring to you and your kin

Good tidings for Christmas and a Happy New Year

 

良き出会いが訪れますよう。あなたとあなたの大事な人に

良き出会いでこのクリスマスを、新年をまた迎えられますよう

 

For we all like figgy pudding,
For we all like figgy pudding,
For we all like figgy pudding, so bring some out here

 

みんな大好きな

イチジクのプディング

クリスマスのプディングを、ここに一切れ持ってきてね

 

Good tidings we bring to you and your kin

Good tidings for Christmas and a Happy New Year

 

幸せな時が訪れますよう。あなたとあなたの大事な人に

幸せな時でこのクリスマスを、新年をまた迎えられますよう

 

We won't go until we get some

We won't go until we get some

We won't go until we get some, so bring some out here

 

僕らここを動かないよ

それを一切れ貰えるまでは

ずっとここを動かないよ。だから一切れ持ってきてね

 

Good tidings we bring to you and your kin

Good tidings for Christmas and a Happy New Year

 

素敵な一年が訪れますよう。あなたとあなたの大事な人に

素敵な一年でまたクリスマスと、次の年をまた迎えられますよう

 

We wish you a Merry Christmas

We wish you a Merry Christmas

We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year

 

良きクリスマスが訪れますよう

来年もあなたに

クリスマスが、そしてまた次なる年が訪れますよう

 

この曲について

 日本でも最もポピュラーな部類に入るこのクリスマスキャロルですが、We wish your merry christmas の部分だけが有名で、それ以外の部分は御存知ない方も多いかもしれませんね。

 

 テーマは、良いクリスマスと新年が迎えられますようにという、一年を無事に終えて、また新たな年を無事に始められることの感謝です。そしてまた、来年も同じようにこの一時を迎えられますようにと言う祈りも込められているように思えます。

 

 さて、この曲は16世紀頃にイギリスで作られた曲とされています。子供から大人まで広く歌われており、また様々なアレンジを施されて今日まで歌い続けられています。また、Good tidings we bring ~ の部分は幾つか違うバージョンがあるようで、特にこれが正解と言うのも無いようです。


We Wish You a Merry Christmas with Lyrics | Christmas Carol & Song | Children Love to Sing

 

 このブログでも御紹介したことのあるエンヤ(Enya)もこの曲をリリースしており、彼女らしいとても厳かなバージョンで歌いあげています。


Enya - We Wish you a merry christmas

 

 また、先日も御紹介したブラックモアズナイト(Blackmore's Night)も、Winter Carol のCDの最後をこの曲で飾っています。


Blackmore's Night - We Wish You A Merry Christmas

 

訳、言葉について

 Wishは「願う」「望む」と訳されますが、どちらかというと「お祈り」に近いニュアンスで、切実さは余りなく「そうだったらいいね」という感じで使われます。

 

 Kin は、親戚という意味を持つ言葉のようですが、どうも古めの言葉のようですね。例文があまり見当たりませんでした。

 

 Figgy pudding はイチジクのプディングのことです。イギリスではクリスマスにプディングを食べるという伝統が有りますが、その代表的なものの一つがこれだそうです。

I Saw Three Ships / Blackmore's Night 他

I Saw Three Ships / Blackmore's Night

Lyrics&訳

I saw three ships come sailing in

On Christmas Day, on Christmas Day

I saw three ships come sailing in

On Christmas Day in the morning

 

三隻の船の来たるを我は見た

クリスマスの日、聖なるこの日に

三隻の船の来たるを我は見た

清きこの日の朝陽の中に

 

And what was in those ships all three

On Christmas Day, on Christmas Day?

And what was in those ships all three

On Christmas Day in the morning?

 

彼の船に乗るは何れの者か

クリスマスの日、聖なるこの日に

彼の船に乗るは何れの者か

清きこの日の朝陽の中の

 

The Virgin Mary and Christ were there

On Christmas Day, on Christmas Day

The Virgin Mary and Christ were there

On Christmas Day in the morning

 

居わすは聖母マリアとキリストなるぞ

クリスマスの日、聖なるこの日に

居わすは聖母マリアとキリストなるぞ

清きこの日の朝陽の中に

 

Pray, wither sailed those ships all three

On Christmas Day, on Christmas Day

Pray, wither sailed those ships all three

On Christmas Day in the morning

 

祈れ、朽ちぬべきかな彼の三隻は

クリスマスの日、聖なるこの日

祈れ、朽ちぬべきかな彼の三隻は

清きこの日の朝陽の中で

 

O they sailed into Bethlehem

On Christmas Day, on Christmas Day

O they sailed into Bethlehem

On Christmas Day in the morning

 

おお、彼の船はベツヘレムへと辿り着かん

クリスマスの日、聖なるこの日

おお、彼の船はベツヘレムへと辿り着かん

清きこの日の朝陽と共に

 

And all the bells on earth shall ring

On Christmas Day, on Christmas Day

And all the bells on earth shall ring

On Christmas Day in the morning

 

大地の鐘ぞ鳴り響かん

クリスマスの日、聖なるこの日

大地の鐘ぞ鳴り響かん

清きこの日の朝陽の中で

 

And all the Angels in Heaven shall sing

On Christmas Day, on Christmas Day

And all the Angels in Heaven shall sing

On Christmas Day in the morning

 

天の御使いぞここに歌わん

クリスマスの日、聖なるこの日

天の御使いぞここに歌わん

清きこの日の朝陽の中で

 

And all the souls on earth shall sing

On Christmas Day, on Christmas Day

And all the souls on earth shall sing

On Christmas Day in the morning

 

普く御魂ぞここに歌わん

クリスマスの日、聖なるこの日

普く御魂ぞここに歌わん

清きこの日の朝陽の中で

 

Then let us all rejoice again

On Christmas Day, on Christmas Day

Then let us all rejoice again

On Christmas Day in the morning

 

讃える慶びを再び我らに

クリスマスの日、聖なるこの日

讃える喜びを再び我らに

清きこの日の朝陽の中で

 

この曲について

 主にイギリスで歌われることの多い、古い歴史を持つクリスマスキャロルで、遡ると作られたのは17世紀の事だそうです。


  この曲では、三隻の朽ちかけた船に聖母マリアとキリストが乗っており、彼らがベツヘレムへと向かう様子が描かれております。一見、聖書の中の1シーンにも思えるのですが、聖書に具体的にこのエピソードが描かれている訳ではないようです。

 

 ただ、ベツヘレムは福音書によってはキリスト生誕の土地とされており、この街の厩で聖母マリアがキリストを産んだとされています。その為、この船に乗っている聖母マリアとキリストというのは、実際はキリストを身籠った聖母マリアと言うことになるのかもしれませんね。なので、キリスト生誕の少し前のエピソードなのかもしれません。(ただ、そう考えると Christmas day という言葉は相応しくないようにも思えるのですが……)

 

 さて、この曲は前述の通り17世紀には既に存在していた曲のようで、現代では童謡を初めとして色んな方に歌われています。ここ数年ですと、このブログでも御紹介したことのあるブラックモアズ・ナイト(Blackmore's Night)が歌ったバージョンが手に入れ易い音源と思われます。(全詞は歌っていませんが)


Blackmore's Night - I Saw Three Ships

 

 日本ではあまりメジャーでは無いかもしれませんが、昨年何故かセブンイレブンでこの曲がかかっていた時期が有りまして、なかなか通な選曲だなぁ等と思った記憶が有ります。

 

訳、言葉について

 wither は、しぼむとか、弱っているという意味の言葉です。今回は船と言う物体に使われているので、老朽化してボロボロな様子を指すのではないかなと思います。

 

 O they ~ という表現が有りますが、この O は感嘆を意味する言葉として使うようです。日本で言う「おお」と同じ意味で捉えて良いようですね。

 

 今回はっきりと分からなかった言葉が2つありまして、一つはearthです。聖書の時代は地動説の概念が無かったはずなので、earth と言った時に、それは現代で言う地球のイメージでは無いのではないかなと思われます。と言うか、この曲が作られたとされる17世紀の時点でも、まだ現代ほど地動説が確固とした立場を形成していなかったため、この歌詞で言う earth は、もっと別の形をイメージするべきかもしれません。

 

 その上で、もう一つ分からなかったのが、All the bells on earth です。これが単に、地上にある鐘の事なのか、それともこの「鐘」が組み込まれた earth のモデル図があるのか、それとも神話のような類の物があるのかと言う点です。実際、これをタイトルとした本も出版されているようなのですが、洋書なので全部読むわけにもいかない(と言うか読めません(笑))ので、もしこの辺りの知識に明るい方がいらっしゃいましたら、お教えいただければと思います。

 

 なお、例によって古語っぽく書いていますが、雰囲気重視の出鱈目文法となっております(こら)

Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

 

Lyrics&訳

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

あんた、スカボロー市場に行くのかい

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あの街に住んでる奴を思い出すな

あの時、あいつは俺にとって本当の──

 

On the side of a hill in the deep forest green

Tracing of sparrow on snow-crested brown

Blankets and bedclothes the child of the mountain

Sleeps unaware of the clarion call


──深い森の中に丘が在ってな。その脇に

雪の上にスズメの茶色の足跡と

山のように積まれた毛布とシーツ

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to make me a cambric shirt

Parsley, sage, rosemary and thyme

Without no seams nor needle work

Then she'll be a true love of mine

 

……服を誂えてくれって、伝えてくれないか。あいつに

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

縫い目も縫い留め無い奴でな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

On the side of a hill in the sprinkling of leaves

Washes the grave with silvery tears

A soldier cleans and polishes a gun

Sleeps unaware of the clarion call


──木の葉がばらついた丘の脇には

墓があるんだ。銀の涙で磨かれたな

そこで兵士が銃の手入れをしてる

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to find me an acre of land

Parsley, sage, rosemary and thyme

Between the salt water and the sea strands

Then she'll be a true love of mine

 

……土地を見つけるよう、伝えてくれないか。1エーカーほど

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

海と波打ち際の間にな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

War bellows blazing in scarlet battalions

Generals order their soldiers to kill

And to fight for a cause they have long ago forgotten


──真っ赤に燃え上がる大軍。戦争さ

指揮官が兵士に、人殺しを命じるんだ

またいつか忘れちまう、そんな程度の理由でな

 

Tell her to reap it with a sickle of leather

Parsley, sage, rosemary and thyme

And gather it all in a bunch of heather

Then she'll be a true love of mine

 

……刈入れ作業は、皮の鎌でやるよう伝えてくれないか

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

刈り取ったら集めて、ギリュウモドキの束の中に

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

スカボローの市場に行くんだろ

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あそこに居るあいつを思い出すよ

あの時、確かに彼女は俺の

 

この曲について

 皆さん、一度はどこかで聴いたことがあるであろう有名な曲だとは思いますが、まさかThe Weightより理解に苦しむことになるとは思いませんでした。有名な曲だからと思っていざ訳してみると、具体的なことは何一つ語られておらず、抽象的かつ突拍子もない言葉が連ねられています。さて、どう読み解いたものでしょう……

 

 とりあえずまず最初に押さえておくべき前提として、この曲は単にスカボローフェアと呼ばれることが多いですが、実際はスカボローフェアと言う寓話めいた古い詩と、カンティクル(Canticle(祈りの歌))という詩の二つをミックスして出来ております。

 

 この本来のスカボローフェアは実際にはもっと長く、そして詩の中に出てくる言伝も、一方通行ではなく双方向で行われるという構成となっています(参考資料:Wikipedia)。内容としては、お互いに無理難題を吹っ掛け、それができなければ恋人じゃない……と相手に伝えるといったもので、意味は理解できるけれど意図が理解できない不思議な詩になっています。

 

 一方で、それに重ねられたカンティクルの方は、この詩だけを切り取ってみれば比較的意図は明快かもしれません。人が訪れる様子の無い思い出の場所、兵士、墓、軍曹、大軍といった不穏なキーワードが並んでいます。こちらも具体的に主人公や恋人の身に何があったのかとか、今どうなっているという描写は有りませんが、少なくとも想いを馳せている方向性は感じ取れます。

 

 となると、どうもこの二つの詩を混ぜ合わせることで、先ほどの不可思議で意図の読めないスカボローフェアの詩に想いの方向性を与え、また歌詞内の言伝が一方向のみとなるようにアレンジすることで、遠き日と人を思う複雑な心情を表そうとしたのがこの曲では無いかなと思えてきます。
 実際、この曲はスカボローフェアとカンティクルが同時並行で複雑に歌いあげられており、聴くと何だか走馬灯のように、懐かしさ、やるせなさ、諦め、一縷の望みといった、まとまり無く絡み合う正負の想いが浮かんでは消えていく様を見ているような気分になります。

 

 さて、この曲はサイモンとガーファンクル(Simon & Garfunkel)によって1966年にリリースされた曲で、この曲中にもある謎の言葉「Parsley, sage, rosemary and thyme」という名のアルバムに収録されています。サイモンとガーファンクルと言えばこの曲と言う方も多いのではないでしょうか。


Simon & Garfunkel - Scarborough Fair/Canticle (Audio)

 この曲は小さい頃からなんとなく知ってはいましたが、まさか今になってこんなに頭を悩まされるとはつゆも思いませんでした。更新が遅れたのはこの曲のせいです(笑)

 

訳、言葉について

 この曲で一番頭を悩まされるのは、やはりParsley, sage, rosemary and thymeでしょう。意味は勿論そのまま「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」です。
 最初は、スカボロー市場と言うキーワードから、主人公の相手は行商人か何かで、これらのハーブを売り歩いているのかと思ったのですが、後半のエピソードとは全く繋がりません。繋がったとしても、別の所で矛盾が出ます。

 

 そして、ああでもない、こうでもないと悩んだ末、この言葉には一切意味は無いのではないかと思うようになりました。というのも、日本でも昔から伝わる歌には意味不明な言葉が沢山あるなと思った為です。例えば

 

「夜明けの晩に、鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ」

「茶壺に追われてトッピッシャン 抜けたらドンドコショ」

「行きはよいよい 帰りはこわい」

 

 のように、内容そのもの、もしくは前後の詩との因果関係が良く分からない歌詞も日本にありますし

 

「イチジク人参山椒にしいたけ」

「一番初めは一宮、二は日光の東照宮」

 

 のように調子だけを優先した全く意味の無い歌詞と言うのもあります。もしかしたら、Parsley, sage, rosemary and thymeもそんな類の言葉なのかもしれません。

 

 また、ハーブは病気を祓う薬草としても使われていたので、言葉に発するだけでも魔除け効果のあるおまじないのようなものしれませんね。
※これも日本にも、桑原という地には雷が落ちなかったことから、雷除けのおまじないで「桑原桑原」なんて唱える風習がありますね。

A Lover's Concerto / The Toys 他多数

A Lover's Concert / The Toys

 

Lyrics&訳

How gentle is the rain

That falls softly on the meadow

Birds high above in the trees

Serenade the flowers with their melodies oh oh oh

 

嗚呼、温もり深く優しい雨が

緑の大地に降り立っていく

木々の頂には鳥たちの歌

花ゆれる音は小夜曲の調べ

 

See there beyond the hill

The bright colors of the rainbow

Some magic from above

Made this day for us just to fall in love

 

あの丘にまで広がる景色

陽を受け煌めく鮮やかな虹

神様の気まぐれな奇蹟が

私達に恋する勇気を

 

Now I belong to you

From this day until forever

Just love me tenderly

And I'll give to you every part of me oh oh oh

 

今、貴方と共に在る

今日この日より、果つることなく

私を包む愛さえあれば

貴方に全てを捧げようと

 

Don't ever make me cry

Through long lonely nights without love

Be always true to me

Keep it stay in your heart eternally

 

どうぞ悲しみを奪い去って

心細い日、愛無き夜を

常に私に偽りの無き

今の貴方で在り続けていて

 

Someday we shall return

To this place upon the meadow

We'll walk out in the rain

Hear the birds above singing once again oh oh oh

 

今この時を忘れなきよう

この緑の大地に再び立とう

雨が終わりを知るまで歩こう

また鳥たちの歌が降るまで

 

You'll hold me in your arms

And say once again, you love me

And if your love is true

Everything will be just as wonderful

 

私をその腕で抱き留めて

そして今一度、愛していると

その言葉に偽り無ければ

世界は薔薇色で在り続ける

 

この曲について

 何というか、愛の讃歌の王道を行くような曲ですね。愛し合う二人がいて、そのお互いの想いにより世界が色鮮やかに彩られていくような、そんなイメージが浮かぶ気がします。

 

 ただ、愛の讃歌と書きましたが、この曲の歌詞からは愛し合う二人が強くイメージできるかと言うと、どうもそんな気がしません。確かにこの曲の主人公は二人の恋人なのでしょうけれど、この曲の焦点はその二人を祝福している世界のように思えます。

 

 優しく降る雨、広がる草原、鳥のさえずり、花の揺れる音、そして雨が上がって鮮やかに架かる虹。二人の世界を織り成す、これら一つ一つの全てから幸せがにじみ出ているような、そんな瑞々しさがこの曲の魅力ではないでしょうか。そしてこの二人の恋という主題を、様々な音色を持つ世界が盛り上げていくという、その様子こそがこの曲のタイトル「A Lover's Concerto(恋する者の協奏曲)」となるのかなと思います。
 なので是非、木、花、鳥等、これらが全て複数形のsをつけて表現されている点も、この曲をイメージするポイントに加えてみて下さい。

 

 さて、この曲は1965年にザ・トイズ(The Toys)によって初めて歌われたものですが、その後も様々な歌手によってカバーされており、日本でも広く歌われてきております。

 


 The Toys - Lovers Concerto - HQ

 

 また日本では、特に最近はサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)のバージョンが良く知られているのではないかなと思います。

 Sarah Vaughan - A Lover's Concerto

 

 ところで、この曲を聴いて「あれ、この曲ってメヌエットって言うんじゃなかったっけ」と思われる方も多いのではないかなと思います。メヌエットはクリスティアン・ペツォールト(Christian Petzold)によって作られた曲で、音楽の教科書で「メヌエット ト長調」として習ったのではないかなと思います。(※なお、以前はバッハ(Bach)作曲と考えられていました)
 A Lover's Concertoはこの曲を元にして作られた曲とのことで、そんなバロック時代の曲調を源流にしている為か、主人公となる恋人二人も「女と男」というよりは「貴婦人と殿方」といった出で立ちが思い起こされます(僕だけでしょうか……)。たまにはこんな、麗らかなラブソングも良いですね。

 

訳、言葉について

 Serenadeは、日本でもほぼそのままローマ字読みでセレナーデと言いますが、小夜曲と訳せます。元は恋人の家の前で恋人を讃える歌の事で、その後オーケストラの楽曲の一形態の呼称となったそうですが、今回は単純に前者の意味で捉えればいいのではないかと思います。

 

 Until foreverは、直訳すれば「永遠まで」となりますが、つまりは「終わりはいつまでも来ない」と言うニュアンスで捉えればいいのではないかと思われます。

 

 一点疑問だったのは、I'll give to you every part of me です。 これ、普通に考えれば to なんか付けずに、 I'll give you every part of me とすればいいんじゃないかと思うのですが、どのようなニュアンスの違いがあるんでしょうね。

プロフィール

笹森茂樹

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