Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

 

Lyrics&訳

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

あんた、スカボロー市場に行くのかい

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あの街に住んでる奴を思い出すな

あの時、あいつは俺にとって本当の──

 

On the side of a hill in the deep forest green

Tracing of sparrow on snow-crested brown

Blankets and bedclothes the child of the mountain

Sleeps unaware of the clarion call


──深い森の中に丘が在ってな。その脇に

雪の上にスズメの茶色の足跡と

山のように積まれた毛布とシーツ

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to make me a cambric shirt

Parsley, sage, rosemary and thyme

Without no seams nor needle work

Then she'll be a true love of mine

 

……服を誂えてくれって、伝えてくれないか。あいつに

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

縫い目も縫い留め無い奴でな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

On the side of a hill in the sprinkling of leaves

Washes the grave with silvery tears

A soldier cleans and polishes a gun

Sleeps unaware of the clarion call


──木の葉がばらついた丘の脇には

墓があるんだ。銀の涙で磨かれたな

そこで兵士が銃の手入れをしてる

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to find me an acre of land

Parsley, sage, rosemary and thyme

Between the salt water and the sea strands

Then she'll be a true love of mine

 

……土地を見つけるよう、伝えてくれないか。1エーカーほど

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

海と波打ち際の間にな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

War bellows blazing in scarlet battalions

Generals order their soldiers to kill

And to fight for a cause they have long ago forgotten


──真っ赤に燃え上がる大軍。戦争さ

指揮官が兵士に、人殺しを命じるんだ

またいつか忘れちまう、そんな程度の理由でな

 

Tell her to reap it with a sickle of leather

Parsley, sage, rosemary and thyme

And gather it all in a bunch of heather

Then she'll be a true love of mine

 

……刈入れ作業は、皮の鎌でやるよう伝えてくれないか

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

刈り取ったら集めて、ギリュウモドキの束の中に

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

スカボローの市場に行くんだろ

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あそこに居るあいつを思い出すよ

あの時、確かに彼女は俺の

 

この曲について

 皆さん、一度はどこかで聴いたことがあるであろう有名な曲だとは思いますが、まさかThe Weightより理解に苦しむことになるとは思いませんでした。有名な曲だからと思っていざ訳してみると、具体的なことは何一つ語られておらず、抽象的かつ突拍子もない言葉が連ねられています。さて、どう読み解いたものでしょう……

 

 とりあえずまず最初に押さえておくべき前提として、この曲は単にスカボローフェアと呼ばれることが多いですが、実際はスカボローフェアと言う寓話めいた古い詩と、カンティクル(Canticle(祈りの歌))という詩の二つをミックスして出来ております。

 

 この本来のスカボローフェアは実際にはもっと長く、そして詩の中に出てくる言伝も、一方通行ではなく双方向で行われるという構成となっています(参考資料:Wikipedia)。内容としては、お互いに無理難題を吹っ掛け、それができなければ恋人じゃない……と相手に伝えるといったもので、意味は理解できるけれど意図が理解できない不思議な詩になっています。

 

 一方で、それに重ねられたカンティクルの方は、この詩だけを切り取ってみれば比較的意図は明快かもしれません。人が訪れる様子の無い思い出の場所、兵士、墓、軍曹、大軍といった不穏なキーワードが並んでいます。こちらも具体的に主人公や恋人の身に何があったのかとか、今どうなっているという描写は有りませんが、少なくとも想いを馳せている方向性は感じ取れます。

 

 となると、どうもこの二つの詩を混ぜ合わせることで、先ほどの不可思議で意図の読めないスカボローフェアの詩に想いの方向性を与え、また歌詞内の言伝が一方向のみとなるようにアレンジすることで、遠き日と人を思う複雑な心情を表そうとしたのがこの曲では無いかなと思えてきます。
 実際、この曲はスカボローフェアとカンティクルが同時並行で複雑に歌いあげられており、聴くと何だか走馬灯のように、懐かしさ、やるせなさ、諦め、一縷の望みといった、まとまり無く絡み合う正負の想いが浮かんでは消えていく様を見ているような気分になります。

 

 さて、この曲はサイモンとガーファンクル(Simon & Garfunkel)によって1966年にリリースされた曲で、この曲中にもある謎の言葉「Parsley, sage, rosemary and thyme」という名のアルバムに収録されています。サイモンとガーファンクルと言えばこの曲と言う方も多いのではないでしょうか。


Simon & Garfunkel - Scarborough Fair/Canticle (Audio)

 この曲は小さい頃からなんとなく知ってはいましたが、まさか今になってこんなに頭を悩まされるとはつゆも思いませんでした。更新が遅れたのはこの曲のせいです(笑)

 

訳、言葉について

 この曲で一番頭を悩まされるのは、やはりParsley, sage, rosemary and thymeでしょう。意味は勿論そのまま「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」です。
 最初は、スカボロー市場と言うキーワードから、主人公の相手は行商人か何かで、これらのハーブを売り歩いているのかと思ったのですが、後半のエピソードとは全く繋がりません。繋がったとしても、別の所で矛盾が出ます。

 

 そして、ああでもない、こうでもないと悩んだ末、この言葉には一切意味は無いのではないかと思うようになりました。というのも、日本でも昔から伝わる歌には意味不明な言葉が沢山あるなと思った為です。例えば

 

「夜明けの晩に、鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ」

「茶壺に追われてトッピッシャン 抜けたらドンドコショ」

「行きはよいよい 帰りはこわい」

 

 のように、内容そのもの、もしくは前後の詩との因果関係が良く分からない歌詞も日本にありますし

 

「イチジク人参山椒にしいたけ」

「一番初めは一宮、二は日光の東照宮」

 

 のように調子だけを優先した全く意味の無い歌詞と言うのもあります。もしかしたら、Parsley, sage, rosemary and thymeもそんな類の言葉なのかもしれません。

 

 また、ハーブは病気を祓う薬草としても使われていたので、言葉に発するだけでも魔除け効果のあるおまじないのようなものしれませんね。
※これも日本にも、桑原という地には雷が落ちなかったことから、雷除けのおまじないで「桑原桑原」なんて唱える風習がありますね。