さて、この曲はなんて言ってるのだろう

英語は苦手ですが、洋楽を和訳しながらあれこれ意味を調べたり考えたりするのは好きなので、その勢いで書いています。
意訳と偏見だらけですが、ご容赦ください。

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Wild Child / Enya

 

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Lyrics&訳

Ever close your eyes

Ever stop and listen

Ever feel alive

And you've nothing missing

You don't need a reason

Let the day go on and on

 

目を閉じることを忘れないで

足を止め、耳を澄ますことを怠らないで

疎かにせず、常に命を感じていて

あなたは満ち足りているはず

理由などいらないの

過ぎ往く一日に身を任せましょう


Let the rain fall down

Everywhere around you

Give into it now

Let the day surround you

You don't need a reason

Let the rain go on and on

 

降る雨を拒まないで

あなたが何処に居たとしても

それに身を委ねるの

その一日に包まれましょう

理由などいらないの

過ぎ往く雨に身を任せましょう

 

What a day

What a day to take to

What a way

What a way

To make it through

What a day

What a day to take to

A wild child

 

何という

何という愛しい日

素晴らしい

この素晴らしい営み

何という

何という愛しい日

野に生きる子となるに

 

Only take the time

From the helter skelter

Every day you find

Everything's in kilter

You don't need a reason

Let the day go on and on

 

少し立ち止まって

慌ただしい時から外れ

日々に見出すの

全てに宿る瑞々しさを

理由などいらないの

過ぎ往く一日に身を任せましょう

  

Every summer sun

Every winter evening

Every spring to come

Every autumn leaving

You don't need a reason

Let it all go on and on

 

変わらぬ夏の太陽

今年も望む冬の星空

幾たび春は訪れ

そしてまた秋は去り往く

理由などいらないの

過ぎ往く全てに身を任せましょう

 

What a day

What a day to take to

What a way

What a way

To make it through

What a day

What a day to take to

A wild child

 

何という

何という愛しい日

素晴らしい

この素晴らしい営み

何という

何という愛しい日

野に生きる子となるに

 

この曲について

 歌詞が凄く細切れで分かりづらい所が多いのですが「無暗に理由など考えずに、自分の周りをとりまく大きな流れを受け入れ、それに身を任せましょう」というメッセージは一貫しているようですね。

 そして、歌詞には瞑想、命、雨、季節といった、自然を象徴する物が数多く登場しますが、その中で2番の前半にだけ「慌ただしさ」という、現代社会を思い起こさせる言葉が顔を覗かせています。ここは、まとまった時間が取れない、あるいは取ろうとしない現代人へのメッセージになっているようにも思えます。

 

 また、サビの部分では、なんて愛しい日、なんて素晴らしい生き方だろうと言っています。自然と共に生きる人々にとっては、このような時間の移ろい身を任せる、ただそれだけで充分かけがえのない物ということでしょうか。

 そして最後にWild Childとタイトルフレーズが入りますが、これをどう捉えたものでしょう。このような日こそ、ありのままに立ち返るのに相応しいということで、自然と生きる子供「Wild Child」でしょうか。ここは文の前後関係がかなり曖昧なので、人によってそれぞれイメージが違うかもしれませんね。

 

 このWild Childというタイトル自体もそうですが、実はあちこちでひっそり韻が踏まれていますので、是非そこも着目してみてください。実際に口ずさんでみると、意外にもリズムがちょっと心地いいです。(listenとmissingが果たして同じ韻として認識されるのかがちょっと自信無いですが)

 

 個人的には、スピリチュアルという言葉はあまり好きではないのですが、目の前の物からは一旦視点を外し、自分の周囲を構成する全ての物に感覚を集中してみるというのは、まさにそれなのでしょうね。そしてまた、この曲にはYou don’t need a reason(理由などいらない)という歌詞が頻出します。実際、心が疲れやすい人ほど、無暗にこの「理由」というのに拘る傾向があるそうです。雑な言い方をしてしまえば、能天気な人の方が心は健康状態であることが多いようで、そうして見ると、この曲はどんな人が日々に疲れているのかという点も、ちゃんと指摘していると言えるかもしれませんね。

 

 さて、この曲はエンヤによって2000年にリリースされたものです。TVでも色々な場面で流されることが多い為、エンヤと言えばこの曲というイメージを持たれている方も多いと思います。特にこの曲がリリースされた2000年前後は彼女を初めとした、いわゆる「癒し」がちょっとしたブームになった時期でして、この曲が収録された「A Day Without Rain」というアルバムを僕が買ったのもその頃でした。

 


Enya - Wild Child (video)

 

 当時は、訳してみるどころか訳詞カードすら見なかったのですが、このアルバムを聴くときは必ず部屋を真っ暗にして、耳を完全に覆うヘッドホンを付けて、目を瞑って聴いていました。その為、このWild Childの冒頭の歌詞を訳してみて、「ああ、当時この歌詞を実践していたんだ」等と思ってしまいました。でも、実際こうして聴いてみると、漫然と聴くのとはだいぶ違った印象を受けると思いますので、是非お試しください。

 

訳、言葉について

 まず、最初にあるEverという単語は、個人的に訳すのに非常に困る言葉の一つです。この一語で、「今まで」と「これから先ずっと」という、ある種正反対な意味を同時に内包している為です。それだけでも厄介ですが、今回のように文の初めに出てくるような使い方は見たことが無かったので、どう訳したら良いのか、最初は見当がつきませんでした。今回の場合は「これから先ずっと」の意味で訳した方が良いのでしょうが、かといってそれで直訳すると永遠にずっと目を閉じていることになってしまうので、恐らく「これから先、目を閉じ、耳を傾けることを、毎日の習慣としてずっと続けてね」というぐらいのニュアンスで訳してみました。

 

 また2番に出てくるHelter skelterですが、これは二語で一つの意味を成す単語で、個別には意味は無いそうです。この二語の意味は「慌ただしい」「乱雑」ですが、英語と同じようにテンポ良い言葉を選んで、「どたばた」とか「てんやわんや」で訳すと面白いかもしれませんね(今回は雰囲気的にそうは訳しませんでしたが)。

 

 サビに登場するWhat a day to take toですが、この「~to take to」で「~に心を寄せる」という意味があるそうで、恐らくこの歌詞上でもその意味で用いられているのではないかなと思います。確信は持てないのですが……(本当、takeは日本人には完全には理解できないニュアンスを持っているように思えます)

 そして同じくサビのMake it throughは、「うまくやり過ごす」とか「乗り切る」といった意味合いの言葉ですが、この曲全体の雰囲気と比較すると、ややネガティブなイメージになってしまう気がしました。どちらかと言うと、一日を無事終えるというぐらいの解釈の方がしっくり来る気がします。ということから、Way(道、方法)という単語もひっくるめて、「営み」と訳してみました。

Grace Kelly Blues / Eels

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Lyrics&訳

The cut-rate mime walking through the dirty street

Of Paris in the hot august heat

Sun melting the fake smile away

Just looking for a place to stay

 

実入りの少ない芸人は、汚い通りを歩いてく

パリの街中、うだる熱気

愛想笑いも出来ない陽の下

居付く場所をただ探してる


The actress gave up all her old dreams

And traded up now she is a queen

Royal families don't have a time for that shit

Your crystal ball - you keep it hid

 

女優は夢を諦めて

代わりに女王になったけど

冗句も言わない宮廷暮らしじゃ

あなたの魅力は出せやしないね

 

The tractor-trailer driver radios:

Help me someone I'm out here all alone

Track driving the black night away

Praying for the light of day

 

大型トラックの運転手さんは、無線でみんなに呼びかける

「誰か助けてくれないか。一人っきりになっちまった」

暗い夜道を行くトラックは

日が差すことを祈ってる

 

The kid in the mall works at Hot Dog on a Stick

His hat is funny shape his heart is a brick

Taking your order he will look away

He doesn't have a thing to say

 

商店街の少年は、ホットドッグのお店でバイト

変な形の帽子を被り、愛想はなかなかいい感じ

けど注文を取るとなると、いつもその目は逸らしてる

本当は話すことは無いと思ってる

 

But me I'm feeling pretty good as of now

I'm not so sure when I got here or how

Sun melting the fake smile away

I think, you know, I'll be okay

 

世の中こんな感じだけれど、今は結構気分はいい

いつこうなったか、もう忘れたけど

愛想笑いもできない陽の下

うまくやっていける気がしてる

 

この曲について

 折角なので、他のサイトで和訳が見つからなかった曲から始めてみようと思います。

 ぱっと見た曲の内容は、現在の世の中を見回して、そこらで起きていることを例にとりつつ、世の中こんな感じだけど、まあ自分はよろしくやってるよ……という感じの曲なのかなという印象です。Eの声質も相まって、何というかのんびりと、そしてある種のどうでもいいというドライさをもって、周りに感情移入することなく、客観的に世の中を眺めている雰囲気がありますね。

※Eとは、Eelsのボーカル、マーク・オリヴァー・エヴェレットのことです。

 

 しかし、です。この曲の第2章だけは、少し毛色が違っています。第2章はこの曲のタイトルにもなっている女優グレース・ケリーが、モナコ大公のレーニエ3世の元に嫁いだことを歌っていると思われますが、この章だけは他の章と韻のふみ方が違います。他の章の第3節、第4節の末尾は全てAway、Stay、Day、Okeyといった、「エイ」という韻でまとめているのに対し、第2章だけはShit、Hidと「イッ(と書けば伝わるかしら・・・)」といった韻ふみとなっています。また、章の主役に対してYouという2人称で語られるのもここだけとなっており、少しだけ相手に対する主人公の主観が入っていることが垣間見えます。これは、自分自身のことも含めた世の中の出来事と比較して、このグレース・ケリーの宮殿入りとなった出来事は特別なことだったのだろうなと思えます。

 

 そこで、この2章に軸を置いてもう一度他の歌詞を見てみると、もしかしたらトラックの運転手が「一人になってしまった」と無線で叫んでいるのは、グレース・ケリーという心の拠り所を無くしてしまったからかもしれませんし、ホットドッグの少年店員も、もう舞台を降りてその輝きをしまい込んだグレース・ケリーに対し、言うべきことは無いと諦観している様子を表しているのかもしれませんね。そして5章では、自分はもう大丈夫だから、気負うことないよと彼女に伝えようとしているという映像が見えてくる気がします。そうしてみると、どれも一見ばらばらなシチュエーションですが、これは全てグレース・ケリーが影響を与えた世の中で、その様子を彼女に伝え捧げる歌として、グレース・ケリー・ブルースなのかもしれません。

 

 一点だけ分からないのが、第1章に出てくるパントマイム師(大道芸人)です。ただ、もしかしたら3節が5章と同じであることから、5章に出てくる自分=パントマイム師なのかなという気もしますね。そうすると、最初途方に暮れて彷徨ってた自分が、最後は「もう大丈夫。ここでやっていける」って言える程度に立ち直っているストーリーが見えて面白いなと思うのですが、いかがでしょうか。

 

 さて、この曲は僕の知っているだけで2バージョン有ります。どちらがオリジナルなのかが良く分からないのですが、アルバム「Daisies Of Galaxy」に収録されているバージョンは、アコースティックを基調に気だるそうなブラスが所々入る、のんきでちょっと世の中を捨ててる感じのある曲に仕上がっており、一方「Sixteen tons」というアルバムに収録されているバージョンは、エレキを取り入れたセッションによるノリの良い曲となっています。こちらはYoutubeにもアップされているようですね。


Eels: Grace Kelly Blues (Sixteen Tons, 2003 KCRW Session) 9/10

 

「Daisies Of Galaxy」に収録されているバージョンも、ちょっと世の中に疲れた時に聴くとなかなか味わい深く思える曲となっていますので、宜しかったら聴いてみてください。LISMOやレコチョクで試聴可能です。

 

訳・言葉について

 この曲はLISMOで購入したのですが、第4章第1節の歌詞が「The kid in the mall works at hawt dawg on a stick」となっていました。海外の歌詞サイトを見ても、この部分は同様に「hawt dawg on a stick」と書いてあるものもあれば「what dog on a stick」と書いてあったりもするのですが、訳す時に全く意味が分からずちょっと困りました。

 

Hawt・・・「イケてる、楽しむ、マブい(死語)

Dawg・・・「仲間」

 

 という意味を持つ言葉で、最初はまあ気のいい仲間と楽しく過ごしているのかなと思ったのですが、どう考えても前後にあるworkだのstickだのorderだのといった文との意味が繋がりません。「What dog on a stick」だとしたらもっと謎です。犬を棒でしばき倒す仕事(趣味)……?

 で、なんだろうなぁと思ってもうちょっと調べてみたのですが、アメリカに「Hot Dog on a Stick」という、ホットドッグのチェーン店があるんですね。多分これかなと。

 

 CDの歌詞カードにどう書かれているかは調べていませんが、Hot Dog on a Stickと固有名詞を出すことが憚られたのかもしれませんね。(※ただ、海外の歌詞は本当に何が正しいのか分からないところがあるので、LISMOの歌詞カードが間違っている可能性もありますが)



プロフィール

笹森茂樹

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