さて、この曲はなんて言ってるのだろう

英語は苦手ですが、洋楽を和訳しながらあれこれ意味を調べたり考えたりするのは好きなので、その勢いで書いています。
意訳と偏見だらけですが、ご容赦ください。

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Raindrops Keep Fallin' On My Head / B.J Thomas

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Lyrics&訳

Raindrops are falling on my head

And just like the guy whose feet are too big for his bed

Nothing seems to fit

Those raindrops are falling on my head, they keep falling

 

雨粒、雨粒、私の頭に

ベッドに余る背の人のように

収まりどころのないものばかり

雨粒、雨粒、私の頭に、このまま、このまま

 

So I just did me some talking to the sun

And I said I didn't like the way he got things done

He's sleeping on the job

Those raindrops are falling on my head, they keep fallin'

 

お日様にぽつりとつぶやいた

君の生き方が気に食わないって

仕事の時間に眠っているなど

雨粒、雨粒、私の頭に、ずっと、ずっと

 

But there's one thing I know

The blues they send to meet me

Won't defeat me

It won't be long 'till happiness steps up to greet me

 

でも一つだけ分かってる

彼らが私の気持ちを塞ごうと

それは私に効きはしない

近い未来、幸せは自分に訪れる

 

Raindrops keep falling on my head

But that doesn't mean my eyes will soon be turning red

Crying's not for me

'Cause, I'm never gonna stop the rain by complaining

 

雨粒、雨粒、ずっと私に

さりとて、赤くはならない私の瞳

泣くのは私に似合わない

この降る雨に文句は無い。止まなくていい

 

Because I'm free

Nothing's worrying me

 

私はもう自由の身

心残りは何もない

 

It won't be long 'till happiness steps up to greet me

 

近いうちに、最高の私に幸せが

 

Raindrops keep falling on my head

But that doesn't mean my eyes will soon be turning red

Crying's not for me, 'cause,

I'm never gonna stop the rain by complaining

 

雨粒、雨粒、今もってなお、私の頭に

それでも、私の眼はそうそう変わらず

涙は私を流れない。そう

雨は降ればいい。問題は無い

 

Because I'm free

Nothing's worrying me

 

そう、私は自由なのだ

気にするものなど何も。一つも

 

この曲について

 自分の人生これで上々。思い通りにいかないことがあっても、そんなの関係なく自分は良い人生を歩んでいける。そんな曲でしょうか。

 

 とはいえ、最初のパートでは大分ご立腹と言うか、苛立たしげな様子が見て取れますね。人生思ったように事が進んでいないのか、気持ちの収まりどころが見つけられない様子です。ベッドに収まりきらない大きさの人間に例え、自分のキャパシティをオーバーしてしまっているようです。そして、そんな自分に振り続ける雨がまた、その鬱屈した気分に追い打ちをかけているように見えますね。太陽にまで文句を言っているようです。

 

 しかし、そんな愚痴っぽいのはここまでです。太陽が仕事をサボり、雨が降り続け、誰かに足を引っ張られようと、そんなものは自分には通用しないと自分に言い聞かせます。そして、どれだけ雨が降ろうとそれにめげず、幸せな結末を見据えて歩き出すことを決意します。

 

 この決意の源となっているのは、自分に自由があるからと言うことみたいですね。冒頭で、世の中収まりどころの無いことばかりという感情があったことを考えると、もしかしたらこの主人公は一旦何もかも捨てたのかも知れませんね。色んなしがらみから逃れ、何も心に気がかりを抱えていないことが、振り続く雨も受け流せる心を作っているように見えます。

 

 さて、この曲は1969年にB.J.Thomasによって歌われた歌で、映画「明日に向かって撃て!(原題:Butch Cassidy and the Sundance Kid)」の主題歌として使われました。国内では「雨にぬれても」と題されています。日本でも、CM等で使用されることが多い曲ですね。


B.J.Thomas - Raindrops Keep Fallin' On My Head

 

 荒くれ者の映画の主題歌なので、一人称をどうしようか非常に迷ったのですが、単にこの曲だけを取り出して聴いてみた時、あんまりそんな荒々しい感じがせず、むしろ淡々と達観したような印象だったので、こんな感じにしてしまいました。

 

訳、言葉について

 Get things done で、「仕事をする」とか「成し遂げる」という意味になるそうです。
 また、これが使用される一文 I said I didn't like the way he got things doneですが、ここで唐突に出てくるHe は、恐らく「太陽」の事ではないかと思われます。もしこの文が

 I said "I don't like the way you got things done"

 私は「君の仕事の有様は気に食わない」と言った

 と鉤括弧を使って、時制のフォーカスを一度太陽に話していたその瞬間に移した表現だったら分かり易かったのですが、今回は鉤括弧を使用せず、時制のフォーカスは常に今現在に固定した客観的な言い回しと思われます。その為

 I said I didn't like the way he got things done
 私は彼(太陽)の仕事の有様が気に食わなかったことを言った

 となるのではないかと思われます。

 

 Won't be long ですが、これは「間もなく」という意味です。まず、Won't は will not の短縮形なので、綺麗に書くとWill be not long となり「それは長くは無いでしょう」となります。そしてこの場合の long は時間の長さのことで、結果「それは(時間的に)長くないでしょう」となります。

 

 Happiness steps up to greet me ですが、この時の step は「足を踏み入れる」という意味で、全体としては「幸せが私に足を踏み入れる」となり、「私に幸せが訪れる」という解釈になるのかなと思います。

Sweet Caroline / Neil Diamond 他多数

Sweet Caroline / Neil Diamond

 

Lyrics&訳

Where it began

I can't begin to knowin'

But then I know it's growing strong

 

いつからだろう

思い出せないや

でも、確かに日に日に強くなっている

 

Was in the spring

And spring became the summer

Who'd have believed you'd come along

 

あれは春だったな

春から夏に変わる季節だ

君という人が現れるなんて、誰も思ってなかった

 

Hands

Touchin' hands

Reachin' out

Touchin' me

Touchin' you

 

この両手

触れ合おう

手を伸ばすんだ

僕に向かって

君に向かって

 

Sweet Caroline

Good times never seemed so good

I've been inclined

To believe they never would

But now I

 

可愛らしいキャロライン

素晴らしい時は、そうとは分からないものだって

今はずっとこう思っている

必ずしも、そんなことは無いなって

でも、僕はまだ

 

Look at the night

And it don't seem so lonely

We fill it up with only two

 

この夜を見てごらん

空っぽには見えないだろう

満たされてるんだよ。君と僕とで

 

And when I hurt

Hurtin' runs off my shoulders

How can I hurt when holding you?

 

辛いと感じることがあっても

肩からすぐに抜けていくんだ

君を抱きしめながら辛くなるなんて出来やしない

 

Warm

Touchin' warm

Reachin' out

Touchin' me

Touchin' you

 

その温もり

触れていたい温もり

手を伸ばして

僕にその手を

君にこの手を

 

Sweet Caroline

Good times never seemed so good

I've been inclined

To believe they never would

Oh, Lord, no

 

大好きなキャロライン

大切なものほど見過ごしてしまうものだって

そう思ってたけど、今は違う

ちゃんと気づくことだってできるって

ああ神様、そうでしょう

 

Sweet Caroline

Good times never seemed so good

Sweet Caroline

I believe they never could

Sweet Caroline

Good times never seemed so good

 

愛しいキャロライン

幸せは傍に在って気付かない物だって

愛すべきキャロライン

でもそんなことはあり得ないよ

愛してるんだキャロライン

この毎日が愛しいことに気付けないだなんてさ

 

この曲について

 キャロラインという女性に、一途に惚れ込んだ様子が歌われている曲と捉えて良いと思います。ただ、この主人公、最初から恋心を持っていたわけではないようで、気が付いたら大好きになっていたという事みたいです。知り合ってからある程度の時間の経過が見られるので、ここは幼馴染とか、学校のクラスがずっと同じとか、人によっていろんなシチュエーションが想像出来るでしょうね。

 

 また、これは歌詞と曲から読み取るべき内容では無いですが、実はこのキャロラインは、当時のジョン・F・ケネディ(John F Kennedy)の愛娘であるキャロライン・ケネディ(Caroline Kennedy)の事であるということが、ここ数年で分かっています。その為、恋人に捧げる曲としてだけでなく、例えば自分の娘に対して歌った歌として捉えることも出来ると思います。

 

 さて、この曲は1969年にニール・ダイヤモンド(Neil Diamond)によって歌われた曲です。聞いた話ですが、とてもアメリカ国民に愛されている曲のようで、この曲が始まると皆で大合唱が始まるとか。


Neil Diamond - Sweet Caroline (Stereo!)

 

 勿論、数多くのアーティストにカバーされており、中でもフランク・シナトラ(Frank Sinatra)のものが有名に思えます。


Sweet Caroline - Frank Sinatra

 

 エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)も歌ってますね。


Elvis - Sweet Caroline (THE HIGHEST audio quality) HD

 

 そして、glee でもこの曲はパックの最初のギグシーンで歌われました。同じユダヤ系のレイチェルを口説く為に、俺歌えるんだぜアピールをする為に使われたのがこの曲です。


Sweet Caroline (Glee)

 パック役であったマーク・サリング(Mark Salling)の御冥福をお祈りします。

 

訳、言葉について

 Good times never seemed so good は、直訳すると「良い時間達は、決して良くは見えない」となります。これは、今が実は幸せであることに人は気付けないことを表した諺のような物と思われます。

 

 また、その後に有る I've been inclined to believe they never would ですが、まず Inclined は心が傾く様子を表す単語なので、I've been inclined となると、「ある時から心が傾き始めた」となります。
 では何に傾き始めたのかというのが To believe they never would です。意味は「決してそうはならないと信じること」となります。
 そして、ではどうならないと信じるのかという事ですが、これは先ほどの Good times never seemed so good のことを指していると思われます。なので、総合すると「今が良い時間だって気付くことだってできるんだ」という事を解釈すれば良いと思われます。

What a Wonderful World / Louis Armstrong

What a Wonderful World / Louis Armstrong

 

Lyrics&訳

I see trees of green, red roses too

I see them bloom for me and you

And I think to myself what a wonderful world

 

木々は青く、薔薇は赤く

目の前に咲く。僕に、君等に

そして言い聞かせる。世界は素晴らしい、と

 

I see skies of blue and clouds of white

The bright blessed day, the dark sacred night

And I think to myself what a wonderful world

 

空の蒼、雲の白

陽に洗われる日、穢れ無き夜

問いかける。世界は素晴らしいだろう、と

 

The colors of the rainbow so pretty in the sky

Are also on the faces of people going by

I see friends shaking hands saying how do you do

But they're really saying I love you

 

空浮かぶ虹。愛らしき色

行き交う顔にも宿るその色

交わされる握手。宜しくの声

その裏にいつも、愛している、と

 

I hear babies cry, and I watched them grow

They'll learn much more than I'll ever know

And I think to myself what a wonderful world

 

Yes, I think to myself what a wonderful world

 

子等の泣き声、育つ姿

幾つもを覚え、嬉しく裏切る

改めて思う。この世界は素晴らしい、と

 

そう。この世界は素晴らしいのだ、と

 

この曲について

 目の前にある、当たり前の光景、いつもの日常に改めてフォーカスを当てることで、この世界の素晴らしさを改めて感じる曲です。

 

 ですが、それは裏を返せば、改めてそのようにして見ないと世界の良さが見えないという事なのかもしれません。そんな思いが現れているのが、この曲のキーフレーズでもある I think to myself what a wonderful world だと思われます。
 単に普段から「世界って素晴らしいな」と感じているのであれば、I think what a wonderful world でいい筈ですが、わざわざ間に to myself を付けて想いの方向を自分自身に向けているということは、世界の素晴らしさを自分自身に言い聞かせているということになります。

 

 そうなると、この歌い手は一度世界に絶望しているのではないか、という背景が推察されます。世の中の汚い部分、見たくもない部分を目の当たりにしてしまったのかもしれませんし、何かあって生きて行くことが辛くなってしまっているのかもしれません。
 ですが、それでもなお主人公はちゃんと生きて行こうします。その為に、改めてこの世界をもう一度信じてみようと、普段の何気ない景色から日常風景に至るまでの中に希望を見い出すのが、この曲なのかなと思います。

 

 さて、この曲はルイ・アームストロング(Louis Armstrong)によって、1967年にリリースされた曲です。邦題は「この素晴らしき世界」となっています。日本国内は勿論、様々な国でカバーされており、映画やCMでも起用されることが多いので、殆どの方はどこかで聴いたことがある曲でしょうね。


Louis Armstrong - What a wonderful world (1967)


 世界の良い面、悪い面を捉えた曲という事では、以前 From a Distance という曲もご紹介してますので、そちらも是非どうぞ。

 

訳、言葉について

 Sacred は、「神聖な」とか「宗教的な」という意味を持つ言葉です。

 

 Going by は、「行く」とか「過ぎ去る」という言葉になります。今回では、街、もしくは同じ時代を行き交う人々のイメージでこの言葉が使われているのだと思われます。

 

 How do you do は、あまり今この言葉を使っているのを見たことが無いのですが「ごきげんよう」とか「お会いできて光栄です」に相当する言葉です。僕が小学生の時(25年位前)にアメリカンスクールとの交流会において、この言葉で初めましてを伝えましょうと言われて使ったことがありますが……今思うとあの時代でも既に古い言葉だったかもしれません。

Respect / Otis Redding

Respect / Otis Redding

Lyrics&訳

What you want, honey you got it

And what you need, baby you got it

All I'm askin' is for a little respect when I come home

Hey now, hey hey hey, yeah now

 

お前の望む物、もう手に入れたよな

お前の必要な物、与えた筈だぜ

何が言いたいかってとだな、俺が帰ってきたら少しは丁重にだな

なあ、おい、聞いてんのか

 

Do me wrong honey, if you wanna

You can do me wrong, honey while I'm gone

But all I'm askin' is for a little respect when I come home

Hey now, hey hey hey, yeah now

 

雑な態度でもいいさ。そうしたいならな

ああ、構わないさ。俺がいない間ぐらいならな

だがこれだけは言わせろ。顔合わせた時ぐらい良い顔しろよ

おい、解かってるのか、おいってば

 

Hey little girl, you're so sweeter than honey

And I'm about to give you all my money

But all I'm askin', hey

Is a little respect when I get home

 

なあお前。ハチミツなんか霞むような甘い奴

お前にいくらつぎ込んだって構わないさ

だが言っておくぜ

俺がいる時ぐらい、もうちょっと態度ってものをだな

 

Hey, little girl, you are sweeter than honey

And I'm about to give you all my money

But all I want you to do

Is just give it, give it

Respect when I come home, hey hey now

Hey hey hey, yeah now

 

なあ、もう一回同じこと言うけどさ

お前に全財産貢いだっていいんだ

俺の望みはただ一つ

たった一つだけだ。頼むから

俺が家にいる時は、ちょっとは旦那として扱えよ

なあ、いいだろそれくらい

 

Respect is what I want from you
Respect is what I need
Respect is what I want
Respect is what I need

 

そう言う目で見てくれっての

有難味ってものを感じろっての

威厳とかそういうのあるだろっての

男の顔を立てろっての

 

この曲について

 ちょうど1年前、この曲のアアレサ・フランクリン(Aretha Franklyn)版を御紹介しましたが、そのもととなった曲がこちらです。この曲では、仕事から戻ってきた男(主人公)が、その時の妻の態度に物足りなさを感じ、自分に対してもっと接し方を改善しろと文句を言う、そんな曲です。

 

 本心かどうかは不明ですが、自分がいないところでは何言おうと構わないから、せめて顔つき合わせている時ぐらいどうにかならないのか……というレベルなので、多少呆れも入っているかもしれませんね。とはいえ、自分としては稼いだ金全てを相手に擲ってる(つもり)のだから、相当不満はあるでしょうね。

 

 ……まあ、というのが主人公側の言い分なのですが、それへの回答がアレサ・フランクリンのRespectなわけで、はたから見てればどっちもどっちですね。

 

 さて、この曲はオーティス・レディング(Otis Redding)によって1965年に歌われた曲です。アレサバージョンの方が売れてしまったのはそちらの記事で記載した通りですが、じゃあこちらが売れなかったかと言うとそういうわけではありません。単に、アレサ版が売れ過ぎただけというようです。



OTIS REDDING-respect

 

 にしても、この曲を見る限り、アメリカにも「亭主関白」だとか「一家の大黒柱」のような概念はあったということが有り有りと見て取れる気もします。ただ時代が1965年というのは、前回の Power To The Peaple でもお伝えした通り、ウーマン・リブ運動が勃興した時代なので、この時点で若干時代を逆行気味だったのかも知れません。

 

訳、言葉について

 I'm about to give you all my money とありますが、I'm about ~で「私タイプの人間なんだよね」と言う感じの言葉になるようです。aboutは便利ですね。

Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

 

Lyrics&訳

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

あんた、スカボロー市場に行くのかい

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あの街に住んでる奴を思い出すな

あの時、あいつは俺にとって本当の──

 

On the side of a hill in the deep forest green

Tracing of sparrow on snow-crested brown

Blankets and bedclothes the child of the mountain

Sleeps unaware of the clarion call


──深い森の中に丘が在ってな。その脇に

雪の上にスズメの茶色の足跡と

山のように積まれた毛布とシーツ

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to make me a cambric shirt

Parsley, sage, rosemary and thyme

Without no seams nor needle work

Then she'll be a true love of mine

 

……服を誂えてくれって、伝えてくれないか。あいつに

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

縫い目も縫い留め無い奴でな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

On the side of a hill in the sprinkling of leaves

Washes the grave with silvery tears

A soldier cleans and polishes a gun

Sleeps unaware of the clarion call


──木の葉がばらついた丘の脇には

墓があるんだ。銀の涙で磨かれたな

そこで兵士が銃の手入れをしてる

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to find me an acre of land

Parsley, sage, rosemary and thyme

Between the salt water and the sea strands

Then she'll be a true love of mine

 

……土地を見つけるよう、伝えてくれないか。1エーカーほど

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

海と波打ち際の間にな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

War bellows blazing in scarlet battalions

Generals order their soldiers to kill

And to fight for a cause they have long ago forgotten


──真っ赤に燃え上がる大軍。戦争さ

指揮官が兵士に、人殺しを命じるんだ

またいつか忘れちまう、そんな程度の理由でな

 

Tell her to reap it with a sickle of leather

Parsley, sage, rosemary and thyme

And gather it all in a bunch of heather

Then she'll be a true love of mine

 

……刈入れ作業は、皮の鎌でやるよう伝えてくれないか

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

刈り取ったら集めて、ギリュウモドキの束の中に

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

スカボローの市場に行くんだろ

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あそこに居るあいつを思い出すよ

あの時、確かに彼女は俺の

 

この曲について

 皆さん、一度はどこかで聴いたことがあるであろう有名な曲だとは思いますが、まさかThe Weightより理解に苦しむことになるとは思いませんでした。有名な曲だからと思っていざ訳してみると、具体的なことは何一つ語られておらず、抽象的かつ突拍子もない言葉が連ねられています。さて、どう読み解いたものでしょう……

 

 とりあえずまず最初に押さえておくべき前提として、この曲は単にスカボローフェアと呼ばれることが多いですが、実際はスカボローフェアと言う寓話めいた古い詩と、カンティクル(Canticle(祈りの歌))という詩の二つをミックスして出来ております。

 

 この本来のスカボローフェアは実際にはもっと長く、そして詩の中に出てくる言伝も、一方通行ではなく双方向で行われるという構成となっています(参考資料:Wikipedia)。内容としては、お互いに無理難題を吹っ掛け、それができなければ恋人じゃない……と相手に伝えるといったもので、意味は理解できるけれど意図が理解できない不思議な詩になっています。

 

 一方で、それに重ねられたカンティクルの方は、この詩だけを切り取ってみれば比較的意図は明快かもしれません。人が訪れる様子の無い思い出の場所、兵士、墓、軍曹、大軍といった不穏なキーワードが並んでいます。こちらも具体的に主人公や恋人の身に何があったのかとか、今どうなっているという描写は有りませんが、少なくとも想いを馳せている方向性は感じ取れます。

 

 となると、どうもこの二つの詩を混ぜ合わせることで、先ほどの不可思議で意図の読めないスカボローフェアの詩に想いの方向性を与え、また歌詞内の言伝が一方向のみとなるようにアレンジすることで、遠き日と人を思う複雑な心情を表そうとしたのがこの曲では無いかなと思えてきます。
 実際、この曲はスカボローフェアとカンティクルが同時並行で複雑に歌いあげられており、聴くと何だか走馬灯のように、懐かしさ、やるせなさ、諦め、一縷の望みといった、まとまり無く絡み合う正負の想いが浮かんでは消えていく様を見ているような気分になります。

 

 さて、この曲はサイモンとガーファンクル(Simon & Garfunkel)によって1966年にリリースされた曲で、この曲中にもある謎の言葉「Parsley, sage, rosemary and thyme」という名のアルバムに収録されています。サイモンとガーファンクルと言えばこの曲と言う方も多いのではないでしょうか。


Simon & Garfunkel - Scarborough Fair/Canticle (Audio)

 この曲は小さい頃からなんとなく知ってはいましたが、まさか今になってこんなに頭を悩まされるとはつゆも思いませんでした。更新が遅れたのはこの曲のせいです(笑)

 

訳、言葉について

 この曲で一番頭を悩まされるのは、やはりParsley, sage, rosemary and thymeでしょう。意味は勿論そのまま「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」です。
 最初は、スカボロー市場と言うキーワードから、主人公の相手は行商人か何かで、これらのハーブを売り歩いているのかと思ったのですが、後半のエピソードとは全く繋がりません。繋がったとしても、別の所で矛盾が出ます。

 

 そして、ああでもない、こうでもないと悩んだ末、この言葉には一切意味は無いのではないかと思うようになりました。というのも、日本でも昔から伝わる歌には意味不明な言葉が沢山あるなと思った為です。例えば

 

「夜明けの晩に、鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ」

「茶壺に追われてトッピッシャン 抜けたらドンドコショ」

「行きはよいよい 帰りはこわい」

 

 のように、内容そのもの、もしくは前後の詩との因果関係が良く分からない歌詞も日本にありますし

 

「イチジク人参山椒にしいたけ」

「一番初めは一宮、二は日光の東照宮」

 

 のように調子だけを優先した全く意味の無い歌詞と言うのもあります。もしかしたら、Parsley, sage, rosemary and thymeもそんな類の言葉なのかもしれません。

 

 また、ハーブは病気を祓う薬草としても使われていたので、言葉に発するだけでも魔除け効果のあるおまじないのようなものしれませんね。
※これも日本にも、桑原という地には雷が落ちなかったことから、雷除けのおまじないで「桑原桑原」なんて唱える風習がありますね。

プロフィール

笹森茂樹

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