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Lyrics&訳

The cut-rate mime walking through the dirty street

Of Paris in the hot august heat

Sun melting the fake smile away

Just looking for a place to stay

 

実入りの少ない芸人は、汚い通りを歩いてく

パリの街中、うだる熱気

愛想笑いも出来ない陽の下

居付く場所をただ探してる


The actress gave up all her old dreams

And traded up now she is a queen

Royal families don't have a time for that shit

Your crystal ball - you keep it hid

 

女優は夢を諦めて

代わりに女王になったけど

冗句も言わない宮廷暮らしじゃ

あなたの魅力は出せやしないね

 

The tractor-trailer driver radios:

Help me someone I'm out here all alone

Track driving the black night away

Praying for the light of day

 

大型トラックの運転手さんは、無線でみんなに呼びかける

「誰か助けてくれないか。一人っきりになっちまった」

暗い夜道を行くトラックは

日が差すことを祈ってる

 

The kid in the mall works at Hot Dog on a Stick

His hat is funny shape his heart is a brick

Taking your order he will look away

He doesn't have a thing to say

 

商店街の少年は、ホットドッグのお店でバイト

変な形の帽子を被り、愛想はなかなかいい感じ

けど注文を取るとなると、いつもその目は逸らしてる

本当は話すことは無いと思ってる

 

But me I'm feeling pretty good as of now

I'm not so sure when I got here or how

Sun melting the fake smile away

I think, you know, I'll be okay

 

世の中こんな感じだけれど、今は結構気分はいい

いつこうなったか、もう忘れたけど

愛想笑いもできない陽の下

うまくやっていける気がしてる

 

この曲について

 折角なので、他のサイトで和訳が見つからなかった曲から始めてみようと思います。

 ぱっと見た曲の内容は、現在の世の中を見回して、そこらで起きていることを例にとりつつ、世の中こんな感じだけど、まあ自分はよろしくやってるよ……という感じの曲なのかなという印象です。Eの声質も相まって、何というかのんびりと、そしてある種のどうでもいいというドライさをもって、周りに感情移入することなく、客観的に世の中を眺めている雰囲気がありますね。

※Eとは、Eelsのボーカル、マーク・オリヴァー・エヴェレットのことです。

 

 しかし、です。この曲の第2章だけは、少し毛色が違っています。第2章はこの曲のタイトルにもなっている女優グレース・ケリーが、モナコ大公のレーニエ3世の元に嫁いだことを歌っていると思われますが、この章だけは他の章と韻のふみ方が違います。他の章の第3節、第4節の末尾は全てAway、Stay、Day、Okeyといった、「エイ」という韻でまとめているのに対し、第2章だけはShit、Hidと「イッ(と書けば伝わるかしら・・・)」といった韻ふみとなっています。また、章の主役に対してYouという2人称で語られるのもここだけとなっており、少しだけ相手に対する主人公の主観が入っていることが垣間見えます。これは、自分自身のことも含めた世の中の出来事と比較して、このグレース・ケリーの宮殿入りとなった出来事は特別なことだったのだろうなと思えます。

 

 そこで、この2章に軸を置いてもう一度他の歌詞を見てみると、もしかしたらトラックの運転手が「一人になってしまった」と無線で叫んでいるのは、グレース・ケリーという心の拠り所を無くしてしまったからかもしれませんし、ホットドッグの少年店員も、もう舞台を降りてその輝きをしまい込んだグレース・ケリーに対し、言うべきことは無いと諦観している様子を表しているのかもしれませんね。そして5章では、自分はもう大丈夫だから、気負うことないよと彼女に伝えようとしているという映像が見えてくる気がします。そうしてみると、どれも一見ばらばらなシチュエーションですが、これは全てグレース・ケリーが影響を与えた世の中で、その様子を彼女に伝え捧げる歌として、グレース・ケリー・ブルースなのかもしれません。

 

 一点だけ分からないのが、第1章に出てくるパントマイム師(大道芸人)です。ただ、もしかしたら3節が5章と同じであることから、5章に出てくる自分=パントマイム師なのかなという気もしますね。そうすると、最初途方に暮れて彷徨ってた自分が、最後は「もう大丈夫。ここでやっていける」って言える程度に立ち直っているストーリーが見えて面白いなと思うのですが、いかがでしょうか。

 

 さて、この曲は僕の知っているだけで2バージョン有ります。どちらがオリジナルなのかが良く分からないのですが、アルバム「Daisies Of Galaxy」に収録されているバージョンは、アコースティックを基調に気だるそうなブラスが所々入る、のんきでちょっと世の中を捨ててる感じのある曲に仕上がっており、一方「Sixteen tons」というアルバムに収録されているバージョンは、エレキを取り入れたセッションによるノリの良い曲となっています。こちらはYoutubeにもアップされているようですね。


Eels: Grace Kelly Blues (Sixteen Tons, 2003 KCRW Session) 9/10

 

「Daisies Of Galaxy」に収録されているバージョンも、ちょっと世の中に疲れた時に聴くとなかなか味わい深く思える曲となっていますので、宜しかったら聴いてみてください。LISMOやレコチョクで試聴可能です。

 

訳・言葉について

 この曲はLISMOで購入したのですが、第4章第1節の歌詞が「The kid in the mall works at hawt dawg on a stick」となっていました。海外の歌詞サイトを見ても、この部分は同様に「hawt dawg on a stick」と書いてあるものもあれば「what dog on a stick」と書いてあったりもするのですが、訳す時に全く意味が分からずちょっと困りました。

 

Hawt・・・「イケてる、楽しむ、マブい(死語)

Dawg・・・「仲間」

 

 という意味を持つ言葉で、最初はまあ気のいい仲間と楽しく過ごしているのかなと思ったのですが、どう考えても前後にあるworkだのstickだのorderだのといった文との意味が繋がりません。「What dog on a stick」だとしたらもっと謎です。犬を棒でしばき倒す仕事(趣味)……?

 で、なんだろうなぁと思ってもうちょっと調べてみたのですが、アメリカに「Hot Dog on a Stick」という、ホットドッグのチェーン店があるんですね。多分これかなと。

 

 CDの歌詞カードにどう書かれているかは調べていませんが、Hot Dog on a Stickと固有名詞を出すことが憚られたのかもしれませんね。(※ただ、海外の歌詞は本当に何が正しいのか分からないところがあるので、LISMOの歌詞カードが間違っている可能性もありますが)