さて、この曲はなんて言ってるのだろう

英語は苦手ですが、洋楽を和訳しながらあれこれ意味を調べたり考えたりするのは好きなので、その勢いで書いています。
意訳と偏見だらけですが、ご容赦ください。

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A Hard Rain's A-Gonna Fall / Bob Dylan

A Hard Rain's Gonna A-Fall / Bob Dylan

 

Lyrics&訳

Oh, where have you been, my blue-eyed son?

And where have you been, my darling young one?

I've stumbled on the side of twelve misty mountains

I've walked and I've crawled on six crooked highways

I've stepped in the middle of seven sad forests

I've been out in front of a dozen dead oceans

I've been ten thousand miles in the mouth of a graveyard

And it's a hard, it's a hard, it's a hard, and it's a hard

It's a hard rain's a-gonna fall

 

おお、息子よ。その眼の青色。変わってないな

聴かせてくれ。一体どこに行っていたのだ

十二の霧山。よろめき歩いた

六つの歪んだ高速道路

七つの陰森たる樹海の奥

数々の死せる海の岸辺

一万マイルの墓場を歩いた

辛い、そう、とても辛い

そんな雨が、降りそうだった

 

Oh, what did you see, my blue-eyed son?

And what did you see, my darling young one?

I saw a newborn baby with wild wolves all around it

I saw a highway of diamonds with nobody on it

I saw a black branch with blood that kept drippin'

I saw a room full of men with their hammers a-bleedin'

I saw a white ladder all covered with water

I saw ten thousand talkers whose tongues were all broken

I saw guns and sharp swords in the hands of young children

And it's a hard, it's a hard, it's a hard, and it's a hard

It's a hard rain's a-gonna fall

 

そうか、息子よ

そこでお前は何を見たのだ

狼の群。奴らが囲う赤ん坊を見た

車の通わぬ高速道路を

血の滴り落つ黒き枝を

阿鼻叫喚で満たされた部屋を

水底に沈む白き梯子を

舌のもがれた話者一万を

銃を刃を持つ子らを見た

酷な、そう、とても酷な

そんな雨が、降りそうだった

 

And what did you hear, my blue-eyed son?

And what did you hear, my darling young one?

I heard the sound of a thunder, that roared out a warnin'

I heard the roar of a wave that could drown the whole world

I heard one hundred drummers whose hands were a-blazin'

I heard ten thousand whisperin' and nobody listenin'

I heard one person starve, I heard many people laughin'

Heard the song of a poet who died in the gutter

Heard the sound of a clown who cried in the alley

And it's a hard, it's a hard, it's a hard, it's a hard

It's a hard rain's a-gonna fall

 

そうか、息子よ

そこでお前は何を聞いた

吠える雷。その告げを聞いた

この世も沈める波の唸りを

焼けた手と百のドラムの奏を

誰も聴かぬ一万の囁きを

餓者の呻きを、他者の嗤いを

どん底で死んだ詩人の歌を

路地裏の道化の嗚咽を聞いた

哀しい、そう、とても哀しい

そんな雨が、降りそうだった

 

Oh, what did you meet, my blue-eyed son?

Who did you meet, my darling young one?

I met a young child beside a dead pony

I met a white man who walked a black dog

I met a young woman whose body was burning

I met a young girl, she gave me a rainbow

I met one man who was wounded in love

I met another man who was wounded in hatred

And it's a hard, it's a hard, it's a hard, it's a hard

It's a hard rain's a-gonna fall

 

そうか、息子よ

そこでお前は何に出会った

死んだ仔馬。そこに佇む子供に出会った

黒い心を抱えた白人

火刑に処される若き女

俺に虹を見せた少女

愛の中に傷つく男

憎悪に傷つく男に出会った

無情な、そう、とても無情な

そんな雨が、降りそうだった

 

And what'll you do now, my blue-eyed son?

And what'll you do now, my darling young one?

I'm a-goin' back out 'fore the rain starts a-fallin'

I'll walk to the depths of the deepest dark forest

Where the people are many and their hands are all empty

Where the pellets of poison are flooding their waters

Where the home in the valley meets the damp dirty prison

And the executioner's face is always well hidden

Where hunger is ugly, where souls are forgotten

Where black is the color, where none is the number

And I'll tell and speak it and think it and breathe it

And reflect from the mountain so all souls can see it

And I'll stand on the ocean until I start sinkin'

But I'll know my song well before I start singin'

And it's a hard, it's a hard, it's a hard, and it's a hard

It's a hard rain's a-gonna fall

 

そうか、息子よ

それで、これから一体どうする

雨が降る前に、戻ろうと思う

最も深い森の奥に

何も持たぬ人々の下に

毒で溢れた彼らの海に

家が牢屋と並びし谷に

覆面の処刑官の住む谷に

飢えた者の怒れる場所に、多くの誇りの失われた地に

色と言えば黒たる場所に、数と言えば零たる場所に行こうと思う

そして語ろう。話し、考え、息づこう

山に木霊させよう。生ける全てに届くよう

海の上にも佇もう。この身が沈み始めるまでは

でもこの歌は溢れだそう。俺の歌い始める前から

そして強い、そう、とても激しい

そんな雨が、降るのだろうな

 

 

この曲について

 世の中に溢れかえる闇の部分の見聞録のような歌ですね。読んでいるだけで、非常に痛々しいシチュエーションばかりが見えてきます。

 

 どういう経緯かは分かりませんが、この主人公は親元を離れ、どこかを別のところを巡ってきたようです。そして親元に戻り、その旅はどうであったかを親から訊かれ、それに答える形でこの歌は進みます。

 

 最初は場所の情景からです。山、海、森など色んな所を巡っていはいますが、どれも主人公にとって決して良い場所では無かったようです。どの景色も、その本来の美しさを見ることは叶わず、霞んでいたり、ぼやけていたり、或いは景色そのものが死んでしまっていたようだと伝えます。

 

 そして、それらの景色の中で何を見たのかを語ります。景色という広い情報から、一気にここで描写が細かくなりますね。捨てられたと思われる赤子、人気のない街、倒された梯子……そして特に、血の滴る枝と血にまみれた部屋、武器を持った子供達といった情報から、この主人公がいたのは戦場で有ったことがうかがい知れます。

 

 聴こえてくるものも、痛々しく皮肉なものばかり。出会う人々も皆悲しみを抱えた人ばかりです。そしてその悲しみに更に追い打ちをかけるような、激しい雨がこれから降ろうとしているようです。

 

 ただ、たった一人だけ、この主人公に希望を与えてくれた人物が居たようですね。主人公に、そんな雨が降りそうな空に虹を見せてくれた少女です。それが一つのきっかけになったかどうかは分かりませんが、最終章でこの主人公は、また辿ってきた場所に戻ることを決意しています。そして、目の当たりにした光景を自分の中で必死に消化し、そして自分の声を悲しみに暮れる彼らに届けようとします。そして、その手段は恐らく歌なのですが、ここで一つ気になるフレーズが出てきます。I'll know my song well before I start singin' です。これは、直訳すると「自分が歌う前から、自分の歌は湧き出てくることを知っている」となります。
 では、どこから湧き出てくるのでしょう。これは個人的な勝手な解釈ですが、自分が歌に込めた心は、世の中の皆の中にも在ると言っているのではないかという気がします。いつか、地獄のような状況も、そういった人々の中に眠る心が変えて行けるのではないかという、希望を込めた言葉なのではないかと思いました。

 

 そして、そんな後に降る雨は彼らに何をもたらすのでしょうね。勿論、悲惨な現状に泥を上塗りするようなことになるかもしれませんが、もしかしたら、全てを流し去ってくれるものであるかもしれません。この曲の結末に何を見い出すか、読み手によってそこは変わってくるかもしれませんが、是非後者であって欲しいなと思います。

 

 さて、この曲は1963年にボブ・ディラン(Bob Dylan)によって歌われた曲で、彼の代表曲、Blowin' In The Wind (邦題:風に吹かれて)のシングルのB面に収録されました。邦題では「はげしい雨が降る」と呼ばれています。
 彼のノーベル文学賞授賞式にて、欠席した彼に代わってパティ・スミス(Patti Smith)によって歌われた歌でもあります。

Bob Dylan - A Hard Rain's A-Gonna Fall (Audio)

 ディランの曲は、最初から最後までが一つのストーリーになっているものが多いですが、会話を進めるように歌が進んでいくという点に、他の曲にはない大きな特徴があります。やっぱり彼はストーリーテラーですね。

 

訳、言葉について

 Highway of diamonds は、正直言ってあまり確信が持てていないのですが、恐らく高速道路のダイヤモンド型インターチェンジの一帯を指しているのではないかと思われます。まさかダイヤモンドで出来た高速道路ということも無いと思いますし、仮に何かの比喩表現だったとしても、他がかなり直接的に描写されている中でこの一文だけ比喩表現を持ち込むと、不自然になる気がしますので。

 

 White ladder は白い梯子です。これ自体に特に熟語的な意味合いは無いのですが、梯子は欧米において、絞首刑や火刑の処刑台をイメージさせるアイテムという側面を持っています。その為、倒れて水底に沈んだ梯子からは、その前に処刑が行われたのであろうという憶測が生まれるのではないかと思われます。
 余談ですが、以前訳した Life の歌詞の中で、迷信深い主人公が「梯子の下なんて通れたものじゃない」と言っていますが、これは上記の理由から「梯子の下を通ると言うことは、処刑台の下を通ると言うことと同じで不吉なこと」というジンクスから来るものです。

 

 Black dog は、そのまま「黒い犬」という意味も勿論ありますが、「心に抱えた闇」「不機嫌」「憂鬱」等、暗い雰囲気を表す言葉としても使われます。

 

 Executioner は、直訳すると「実行する者」ですが、この単語においては特にピンポイントで「死刑執行人」を意味する言葉として使われます。イメージとしては、罪人の首を斬り落とす係となります。

 

 Black is the color をどう訳そうかは非常に迷ったのですが、color に the という冠詞がついているので、皆に共通認識のある色、即ち「黒が代表的な色」とか「黒が象徴的な色」という意味合いで訳してみました。 None is the number も同様のニュアンスで、「ゼロが代表的な数字」のように捉えました。

Forever Young / Bob Dylan

 

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Lyrics&訳

May God bless and keep you always

May your wishes all come true

May you always do for others

And let others do for you

 

お前にいつも神の恵みがありますよう

お前の全ての望みが叶いますよう

お前がいつも誰かの為に生き

そして誰もがお前に手を差し伸べますよう

 

May you build a ladder to the stars

And climb on every rung

May you stay

Forever young

 

お前が天に届く梯子をかけ

その一段一段を挫けず登れますよう

お前がそのままで在りますよう

いつまでも、いたいけなままで


Forever young, forever young

May you stay forever young

 

いつまでも、これから先も

振り返らず、前を向いたままでいますよう


May you grow up to be righteous

May you grow up to be true

May you always know the truth

And see the lights surrounding you

 

お前が正義と共に歩みますよう

お前が正直な心で生きますよう

お前が常に真実を求め

そしてその目に数多の光が現れますよう

 

May you always be courageous

Stand upright and be strong

May you stay

Forever young

 

お前が常に勇気を持ち

強く正しく在りますよう

お前がそのままで在りますよう

いつまでも、真っすぐなままで

 

Forever young, forever young

May you stay forever young

 

いつまでも、これから先も

諦めずに、何度も立ち上がれますよう


May your hands always be busy

May your feet always be swift

May you have a strong foundation

When the winds of changes shift

 

お前の手には常に成すべきことがありますよう

お前の足には常に赴くべき地がありますよう

お前の下には崩れぬ礎がありますよう

いつか、時代の風が吹いたその時に

 

May your heart always be joyful 

And may your song always be sung

May you stay

Forever young

 

お前の心が常に歓びに溢れていますよう

お前を讃える歌がいつまでも歌われますよう

お前がそのままで在りますよう

いつまでも、情熱あるままで

 

Forever young, forever young

May you stay forever young

 

いつまでも、これから先も

衰えず、若きままで在りますよう

 

この曲について

 非常にシンプルでストレートな歌詞なので、内容も伝わりやすいですね。恐らく自分の子供に対して歌われた歌ではないかなと思いますが、このような人間になって欲しい、このような人生を歩んでほしい、そして、いつまでも若々しい心を忘れずにいて欲しいという、そんな想いを伝える歌です。卒業式等の歌にも使えますね。

 

 歌詞はシンプルですが、やっぱりボブ・ディランだなというかなんというか、ストーリー性がちゃんとありますね。最初に神の祝福が在りますようにという所から始まっているということは、ここは相手(you)が生まれた直後であると思われます。

 そして、その次では1段1段梯子を着実に上って行って欲しいという想いになっておりますが、これは立って歩けるようになったり、少しずつ喋ることができたりと、子供ができることが増えていくのだろうなという期待と願いを込めているのではないかなと思います。

 

 そして次では、正しく在って欲しい、正義と共に歩んで欲しいという、精神面への成長を期待しており、その次は社会の中で常に必要とされる人で有り、やるべきことを持った人間であって欲しいと言う想いに変わり、最後は皆から讃えられる人であって欲しいとまで願ってしまっています。つまり全編を通すと、子供の一生涯を歌っており、そしてそれが充実した素晴らしいものであることを祈っております。言ってみれば「這えば立て、立てば歩めの親心」を壮大にした歌ですね。

 

 そして要所要所で、Forever Youngと言っています。これは、今のその瞬間の心を忘れないで欲しいという意味合いで捉えればいいと思いますが、歌詞中の時制と共に少しずつそこに含む意味合いが変わってくると思いますので、訳もそんな形で記載してみました。

 

 また、この曲を子供に対して歌っている歌と捉えたとしても、子供が生まれた時に、これから先の子供の成長とその先の人生を祈っているという情景を思い描く方もいらっしゃるでしょうし、子供と一緒に歌い手も歳を重ねており、子供の成長の折々に、その輝きを失わないで欲しいと願っているという情景が浮かぶ方もいらっしゃると思います。受け手によって見え方が変わってくるので、世の中のいろんな親にヒットする曲ではないかなと思います。

 

 さて、この曲はボブ・ディラン(Bob Dylan)によって1974年にリリースされたアルバム「Planet Waves」に収録された曲です。と言っても、自分としては中学校の「3年生を送る会」で歌ったことがあるから知っていたのであって、このレコードやCDは持っていないのですが・・・

 このPlanet Wavesに、この曲はスローバージョンと通常バージョンの2バージョンが収録されておりますが、どうも世間的にはスローバージョンの方が広く認められているようで、この曲のカバーを聴いてみると殆どがこのスローバージョンで歌われています(実際僕が歌ったのもスローバージョンでした)

 


Bob Dylan - Forever Young (Slow Version) [audio]

 

 なお通常バージョンは、ハーモニカをフィドル代わりのように使った、賑やかなお祝いの曲のようになっています。レコチョクなどでも手に入るので、一度こちらも聴いてみてください。

 

訳、言葉について

 複雑な言い回しが無いので、特筆することはあまりないのですが、頻出するMay youは「どうか~であって欲しい」とか「願わくば~となって欲しい」といった、未来の可能性を望む意味合いで使われています。ただ、口語的ではないようで、どちらかと言うとちょっと古めかしい祝詞や呪文の詠唱に出てきそうな雰囲気の言葉です。日本語で表すなら「願わくば、この者に神の御加護があらんことを」のような雰囲気になるのでしょうか。ただ、この雰囲気で訳してみたら余りにもRPGみたいな雰囲気になってしまったのでやめました(笑)

The Times They Are A-Changin' / Bob Dylan

 

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Lyrics&訳

Come gather 'round people wherever you roam
And admit that the waters around you have grown
And accept it that soon you'll be drenched to the bone
If your time to you is worth savin'
Then you better start swimmin' or you'll sink like a stone
For the times they are a-changin'

 

さあ、のんきにほっつき歩いてる市民の皆。ちょっとこの辺に集まるんだ
いいか、もうすぐ大きな波が訪れる。それをまず認めるんだ
巻き込まれることはもう避けられない。受け入れるしか道はない
そして胸に手を当てて考えろ。今その人生を守りたいか
もしそうなら、行動を起こせ。今からだ。さもないと、なす術もなく沈んじまうぞ
時代は変わるんだ

Come writers and critics who prophesize with your pens
And keep your eyes wide the chance won't come again
And don't speak too soon for the wheel's still in spin
And there's no tellin' who that it's namin'
For the loser now will be later to win
For the times they are a-changin'

 

ああ、予言者気取りの物書きさんたちもよく聞いておくんだ
いいか、よくその目に焼き付けておけ。こんな機会は人生に1度有るか無いかだ
おっと、まだ話題にするのは早すぎる。まだかろうじて世は回れてる
それにまだ、誰がこれに名前を付けるのかも分かっちゃいない。
そら、これから負け犬が巻き起こす大番狂わせが始まるぞ。
時代は変わるんだ

 

Come senators, congressmen please heed the call
Don't stand in the doorway don't brock up the hall
For he who gets hurt will be he who has stalled
There's a battle outside and it is ragin'
It'll soon shake your windows and rattle your walls
For the times they are a-changin'

 

さて、お偉い議員の皆々様。あんたがたも気をつけるんだ
いいか、ドアの間には立たない方がいい。かといって、立てこもるのもお薦めしない
ぼさっとしてたら怪我しちまうぜ
表を見てみな。あんた方に災いをもたらす争いが繰り広げられてる。
そら、もうすぐその窓も壁も恐ろしい悲鳴をあげ始めるぞ
時代は変わるんだ

 

Come mothers and fathers throughout the land
And don't criticize what you can't understand
Your sons and your daughters are beyond your command
Your old road is rapidly agin'
Please get out of new one if you can't lend your hand
For the times they are a-changin'

 

なあ、この国に普く親御さんたちも覚えておくんだ
いいか、自分が理解できないことにまで口を挟むもんじゃない
もう息子さんたちだって世話を焼いてやるほど子供じゃない
それにあんた方の語る生き方は、奴らにとっちゃ古すぎるんだ
もうその手を貸せないのなら、道を譲って見守ってやれ
時代は変わるんだ

 

The line it is drawn, the curse it is cast
The slow one now will later be fast
As the present now will later be past
The order is rapidly fadin'
And the first one now will later be last
For the times they are a-changin'

 

時は来た。今、一つの終わりが始まる
そら、ドンくさかった奴にもう追い抜かれるぞ
今この時この瞬間も、あっという間に昔に変わるんだ
順位だ序列だなんて物は、もう無くなったも同然で
ああついに、王者も引きずり降ろされどん底に落ちる
時代が変わるんだ 

 

この曲について

 この曲はそれぞれの章のシチュエーションにおいて、時代の変化を象徴する出来事にスポットライトを当て、時代は常に変わるものなのだという訓示を、ギターとハーモニカで郷愁を交えつつ伝えている歌ですね。

 

 ……と昔、歌詞カードの訳を見てうっかりそんな解釈をしてしまっていたのですが、この曲の持つ様相はそんな穏やかな物では無いようですね。確かにこの曲は全部で5章に分かれておりますが、実際のところは大きく分けて2部構成となっています。第1部は1章~4章、第2部が5章です。そして、この曲における重要なキーは2章、そして5章にあると思います。

 

 第1章では、時代の変化と言うものを迫り来る水に例え、そんな中で泳ぐのをやめたら沈んでしまうよといった、かなり抽象的な表現に留めているのみで、具体的な話は特にありません。その為、この章だけを切り取ってみた場合、単なる人生の教訓話と見てとれると思います

 

 しかし、です。第2章で一つ重要な言葉が出てきます。それは、There's no telling who it's namin'という一文です。これは前後の文と繋げると「誰がこの逆転劇に名前を付けるのか、言える者はまだいない」という解釈ができます。これは裏を返せば、「これから間もなく起こる大逆転には、いずれ誰かによって名前が付けられる」という事を、この歌い手は確信しているという事になります。つまり、歴史に名が刻まれる程の規模で大きな出来事になると、彼は知っているのです。

 そしてまた、2章には訓示と思えるような物もなく、ただ「間もなく歴史的大逆転が起きるだろう」と言っているだけで、この章は何一つ完結していません。この事から、各章は別個の時代、別個のシチュエーションが描かれているのではなく、どうも同じ時、同じ場所のこととして繋がっていることが見えてきます。

 

 それを踏まえて第3章を見ると、もっと話が具体的になります。議員達に向かって、その建物から離れて逃げた方が良いと警告する傍ら、既に彼らの建屋の周りでは、今にもその壁を殴り、窓に掴みかからん程の争いが始まっていると言っています。

 

 この3章と2章を繋げた先から見えてくるもの  「革命」です。

 

 この事実に気付いたとき、第1章の持つ意味合いも一転します。一見、何かの道徳めいた響きを持つこれらの言葉も、この全てを見通せてしまっていた彼が語ったとしたら、これは教訓ではなく明らかな勧告です。

 

 第4章に出てくる親達も、この事によりその様相が違って見えてきます。もしこの章だけを独立して捉えてしまえば、この親達は単に新しいものを認めない頑固者です。しかし、1~3章を繋げた上で見てみれば、革命を起こそうと躍起になっている自分の子供らを心配し、或いは嘆き、時には暴力に訴えてでも立ちはだかって止めようとする必死な親達の姿が浮かび上がる気がします。

 

 さて、この4章までが第1部です。ここに至るまで、様々な警告、忠告、説得等を通じ、ただ一貫して時代は変わると告げられてきました。ここで重要なのは、逆を言えば1~4章の時点では、まだ時代は変わっていないということです。

 

 そして  運命の第5章です。
 唯一この章だけは「Come 誰々~」という言葉で始まっていません。これはもはや、周囲の人々に呼びかけて廻る段階ではなくなったという事です。新たな時代の始まりを示す線が引かれ、一つの時代を終焉へと至らしめる呪いが放たれる……革命の始まりです。これまで光を浴びなかった者が急に台頭し始め、今という時が瞬く間に昔に変わり、かつて序列と呼ばれた形は崩壊し始めることが、この章では語られます。

 

 しかしです。この章の情景はこれだけに留まらないということを忘れてはいけません。かつて第1章から第4章で告げられた事、それらがこの5章で堰を切ったように立て続けに起きることになるのです。子供達を止めることを諦めた老人たちはなす術もなく見守り、議会の建屋は打ち壊され、上院議員も下院議員も群衆に怯えて逃げ隠れ、かつての負け犬は勝利の雄叫びを上げ、行動を起こさなかったものは歴史の荒波に沈み、そしてついには、トップに君臨していた者も底辺へと転落する……そんな、混沌を全て一枚絵に収めたような景色が繰り広げられることになります。

 

 そして、少しも経つと、どこかの物書きが、この時代の変化と新たな時代に名前を付けるのでしょうね。

 

 さて、この曲はボブ・ディランの手になる著名な曲ですが、僕はこの曲はブラックモアズナイト(Blackmore's Night)というユニットによるカバーで知り、本家を改めて聴いたのはそれから大分後のことでした。

 ブラックモアズナイトのカバーは、北欧民族を思い起こさせる牧歌的でメロディアスな曲であった為、その後でボブ・ディランの歌うこの曲を聞いた時、あまりの衝撃に果たしてこれは歌なのかとすら思ってしまいました。何せ、かろうじてギターとハーモニカが鳴ってはいるものの、歌声にはメロディがあるのかどうかも怪しいもので、リズムに至っては皆無と言った有様。体裁を考えずに感情のままに書くことを殴り書くと言うなら、この曲を歌う彼は殴り歌っているという表現がぴったりに思えます。しかし実際に訳してそのイメージを掴んだ上で改めて聴くと、何とも味わい深く聴こえてしまうから不思議なものです。

 なので、今回は殴り訳すぐらいでもいいかなと、勝手に意味を変えたり脚色したりした、大分乱暴な訳にしてしまいました。ご容赦下さい。

 

 ただ実際のところは、原文自体はとても文学的な趣の強い作品に思えます。僕自身は英語の文学は全く読んだ事が無い為、何が良くて何が良くないのかは正直解からないのですが、どうも韻文の形式を大事にされているように見えますし、その上で全体では起承転結(この曲の場合、起転承結になる気もしますが)が完成されております。そして尚且つ、5章の最初の一文を皮切りにして、読み手に怒涛の展開を強烈にイメージさせるように物語の運び方が練られている辺り、素人目に見ても見事だなと思います。今回、改めて一から自力で訳してみて良かったなと思える曲でした。

 


Bob Dylan The Times They Are A Changin' 1964

 

訳、言葉について

 2章の最初にprophesizeという単語が出てきます。これは「予言する」を意味する言葉ですが、これはどうも古語とか、もしくは特定の地方でのみ使われるといった類の言葉であり、現在では「予言する」はprophesyを使用するのが正統な英語のようです。その為、Weblioで調べてもこの単語は出てこないのですが、面白いことにWord等のスペルチェック機能ではエラーにならないようです。
 ボブ・ディランが普段どちらを使っていたかは分かりませんが、prophesizeという亜種的な言葉を利用することで、胡散臭さやニセモノといった雰囲気を出したかったのかも知れませんね。

 

 そして、5章の最初に唐突に出てくる「The line it is drawn, the curse it is cast」ですが、これは僕の中で長らく謎の言葉でした。単純に意味を訳すことは出来ます。「線は引かれ、呪いは放たれる」です。しかし、これがいくら調べても何を意味しているのかが全く分からず、歌詞カードの訳も「一線が画され、呪いがかけられた」とだけ書かれている始末でした。その為、最終的には何かの銘文の引用なのだろうなと勝手に解釈していました。

 しかし、分からないのも無理が無かったように思います。僕の英語力の問題も勿論あるのですが、僕がこの曲を知ったカバーバージョンは1章、3章、5章しかなく、それぞれの章が繋がっているというイメージを描けなかったのです。恐らくこの一文は、曲の全体像をイメージできて初めてその意味を、臨場感を持って捉えられる気がします。逆に言えば、各章をバラバラに解釈していては、この部分を訳すことは不可能なのではないかと思います。

 ここで言われる線とは、一つの時代の終わりと新たな時代の始まりを同時に意味する、歴史上の境界線です。歴史年表では例えば室町時代と安土桃山時代の間に線が引かれていますよね。ムードの無い例えですが、そんな時代と時代の境に引かれる線です。それが今、まさにこの瞬間に引かれようとしていることを表現していると思われます。

 そして呪いです。呪いとは一般的に、人の幸福や繁栄を阻害し、苦痛や災いを与え、時には死に至らしめるものです。それがこの一つの時代に向かって放たれたとすることで、その時代が終焉に至ることを表現しているのだと思います。

 

蛇足

 上記にもある通り、ブラックモアズナイトが歌うこの曲は、およそ原曲のイメージとかけ離れた、穏やかな、古き良き時代を彷彿とさせる雰囲気に仕上がっております。章も完全には語られず1章、3章、5章、そしてまた1章という構成になっています。

 


Blackmore's Night - The Times They Are a Changin - 720p

 

 これは完全に深読みや妄想の類になるのですが、ブラックモアズナイトのコンセプトというかイメージは、吟遊詩人のスタイルです。その為、かつて激動の時代に歌われたこの曲を、数十年後において彼らは「かつてこんな歴史があったんだよ」という、一つの叙事詩として歌っていると考えると面白いなと思います。その為に、詩もいくつか抜いて殺伐としたイメージを除き、最後に改めて1章を持ってくることで、歴史の教訓を含んだ伝承歌に生まれ変わらせたのかもしれませんね。


 勿論、僕の勝手な想像なのですが、そうだったら素敵だなと思います。


プロフィール

笹森茂樹

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