さて、この曲はなんて言ってるのだろう

英語は苦手ですが、洋楽を和訳しながらあれこれ意味を調べたり考えたりするのは好きなので、その勢いで書いています。
意訳と偏見だらけですが、ご容赦ください。

Drive By / Train

Drive By / Train

 

On the other side of a street I knew

Stood a girl that looked like you

I guess that's déjà vu

But I thought this can't be true

 

いつもの通りの反対側でさ

お前に似た娘が立ってた

ああ、これがデジャヴってやつか

まあ、それが現実にはならないよな

 

'Cause you moved to west LA

Or New York or Santa Fe

Or wherever to get away from me

 

そうだろ。お前は行っちまった。西ロスだか

ニューヨークだか、サンタ・フェだか

まあ、どこだっていい。とにかくいなくなっちまったんだ

 

Oh but that one night

Was more than just right

I didn't leave you 'cause I was all through

Oh I was overwhelmed and frankly scared as hell

Because I really fell for you

 

ああ、でもあの夜は

光よりも眩しかった

俺はお前を放さなかった。ずっと一緒だった

だが何もできなかった。言っちまえば怖かったんだ

本気でお前にやられちまってたから

 

Oh I swear to you

I'll be there for you

This is not a drive by

Just a shy guy looking for a two-ply

Hefty bag to hold my love

When you move me everything is groovy

They don't like it sue me

Mmm the way you do me

Oh I swear to you

I'll be there for you

This is not a drive by

 

ああ、誓うよ

お前と一緒に居るって

一時の感情なんてもんじゃないんだ

シャイな奴が探し回ってる。二枚重ねの

ゴミ袋に自分の気持ちを隠す為に

お前が寄って来れば全部イケてるんだ

誰も文句も無いくらいに

なあ、いいだろ

そうさ、誓うさ

お前の傍に居るって

思い付きで言っているんじゃない

 

On the upside of a downward spiral

My love for you went viral

And I loved you every mile you drove away

 

螺旋階段を転がり落ちるように

俺の想いは病気じみていってた

お前が遠ざかる度、俺はお前を

 

But now here you are again

So let's skip the "how you been"

And get down to the "more than friends" at last

 

だけどまたお前は目の前にいる

久しぶりなんて言葉もすっ飛ばして

やっと”友達以上”ってやつにまで戻れた

 

Oh but that one night

Is still the highlight

I didn't need you until I came to

And I was overwhelmed and frankly scared as hell

Because I really fell for you

 

ああ、あの日の夜は

もう単なる思い出でいい

ここに来るまで、お前を諦めてた

何も言葉にならなかった。怖かった

本気でお前に惚れたんだ

 

Oh I swear to you

I'll be there for you

This is not a drive by

Just a shy guy looking for a two-ply

Hefty bag to hold my love

When you move me everything is groovy

They don't like it sue me

Mmm the way you do me

Oh I swear to you

I'll be there for you

This is not a drive by

 

だから誓うさ

ずっとお前についてる

単なる偶然じゃ終わらせない

気弱な奴が2枚重ねの

ゴミ捨て袋に気持ちを詰め込み

お前が来れば全てが最高だ

誰にもとやかく言わせやしない

さあ、だから来いよ

裏切ったりしない

お前を離れたりしない

この場限りになんてさせやしない

 

Please believe

That when I leave

There's nothing up my sleeve

But love for you

And a little time to get my head together too

 

なあ、信じてくれ

俺がお前を離れる時

そんなのどこ探したってあるわけない

あるのはお前への愛と

肩を並べる短い時間と

 

On the other side of a street I knew

Stood a girl that looked like you

I guess that's déjà vu

But I thought this can't be true

'Cause

 

いつもの通りの向かい

お前によく似た女

ただの幻だ

っておい、嘘だろ

だってお前は……

 

Oh I swear to you

I'll be there for you

This is not a drive by

Just a shy guy looking for a two-ply

Hefty bag to hold my love

When you move me everything is groovy

They don't like it sue me

Mmm the way you do me

Oh I swear to you

I'll be there for you

This is not a drive by

 

ああ、誓ってやるさ

いつも傍についてやるって

こんなの気まぐれで言えるわけないだろ

奥手な俺でも、丈夫に重ねた

袋からも気持ちが溢れる

お前が何かするたび心が躍る

何言われようと構いやしない

そうさ、いつも俺を向いていてくれ

もう迷わない

お前と一緒だ

俺は真剣なんだ

 

この曲について

 何か理由があって離れ離れになった恋人と、街角で偶然再会して再び燃え上がってしまう、そんな曲なのかなと思います。若干自身は無いですが……

 

 1番では、街角で昔の彼女に似た人を発見したものの、それは幻だと思います。それもそのはず、彼女は既にどこか遠くに引っ越しているようですね。もう忘れようとしたのか、どこに引っ越していったかまではよく覚えていないようですが、一緒に過ごした時間はまだ強く残っているようです。

 

 そして、そんな想い出が忘れられず、狂おしくなり始めた2番で、突然その彼女が目の前に現れます。それで、そんなやり場のなかった想いが溢れ出し、もう二度と離れないと相手を力強く口説き落とします。なかなかドラマチックな展開です。

 

 ではこの彼女、なぜ突然目の前に居るのか……というのが、Dメロで明かされます。1番で見かけた彼女に似た人、その人がどうも本当に彼女だったというオチのようです。内容はベタですが、シーンの展開順序としては、ポップスではあまり見ないかもしれませんね。

 

 さて、この曲はトレイン(Train)によって2012年にリリースされた曲で、収録アルバムはCalifornia 37です。ラテン系の情熱を思わせる出だしとあちこちカッコつけたサビで、聴いてすぐにハマってしまった曲です。暑い夏にピッタリかなと思って、今回訳してみました。


Train - Drive By

 

 にしてもこのPV、街角で偶然出会うどころか、どう見ても婚活パーティーなんですが……

 

訳、言葉について

 まずタイトルの Drive by をどう訳すればいいのか良く分からなかったのですが、どうも意味合いとしては「走っている車の中から何かをする」という感じのようです。Drive by shooting と言えば、走行中の車から人や動物を撃つことのようで。
 恐らく、この曲においては車の中からの声掛け、ナンパのような物かなと思います。そして、この曲では This is not drive by と言っているので、「そんな、"ヘイ彼女、ちょっと車乗ってかない?"みたいな軽いノリのつもりじゃないぞ」という事なのではないかなと思います。

 

 I was all through ですが、まずI was throughだと、「私は通り抜けた」→「私は終わった」という意味になるようです。これにAllが付くことで「私は最初から最後まで通り抜けきった」→「最初から最後までを経験した」という意味で捉えられるようです。なので、簡単に言えば「終始」と捉えれば良いのかなと思います。

 

 Overwhelm は「圧倒する」と言う意味です。受身で使って、感動したり怖かったりして声も出ないような時に使う言葉のようです。

 

 Frankly は「端的に言うと」「言ってしまえば」「ぶっちゃけて言うと」のようなニュアンスの言葉かなと思っています。

 

 Two-ply は少し悩みました。この ply というのはちょっと表現が難しいのですが、同じ物を2つ3つ使って、より強い1つにする……のようなニュアンスかなと思います。例えば、ティッシュのように2枚重ねで1枚とか、紐のように2本3本の紐を撚り合わせてより太い1本の紐にするとか、そう言った状態をTwo-ply とか Three-ply と呼ぶようです。
 で、これをこの曲の中でどう解釈したものかと思ったのですが、後に続くHafty bagがゴミ捨ての時に使う袋の事のようなので、これにかかっていて、2枚重ねのごみ袋……かな?でもなんでゴミ袋に愛を詰め込むんでしょう……

Take A Bow / Rihanna

Take A Bow / Rihanna

 

Lyrics&訳

Oh, how about a round of applause, yeah

A standing ovation

Oh, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah

 

まあ、拍手喝采ってやつね

もう、会場総立ち

ねえ、そうでしょ

 

You look so dumb right now

Standing outside my house

Trying to apologize

You're so ugly when you cry

Please, just cut it out

 

上手い言葉が出てこないようね

私の家まできておいて

せめて謝っておきたいって

あなた、泣きそうに顔を歪めてる

悪いけど、やめてくれない?

 

Don't tell me you're sorry 'cause you're not

Baby when I know you're only sorry you got caught

But you put on quite a show

Really had me going

But now it's time to go

Curtain's finally closing

That was quite a show

Very entertaining

But it's over now

Go on and take a bow

 

悪かったなんて聴きたくないの。嘘だから

私にばれたときだけしか言わないもの

まあでもなかなか役者よね

すっかりのめりこんだもの

でももうお芝居の時間は終わり

幕もそろそろ下りる頃よ

良く出来たショーだった

楽しませてもらったわ

でももう終わり

さ、最後に主演から挨拶して

 

Grab your clothes and get gone

You better hurry up

Before the sprinklers come on

Talking' bout'

Girl, I love you, you're the one

This just looks like a re-run

Please, what else is on

 

その衣装を持って帰って

さっさとしてね

庭のスプリンクラーが動き出す頃だから

あの台詞、覚えてる?

ねえ君、愛してるよ。君しかいない

さしずめ名場面をもう一度ってくらい何度も

他に何か無かったものかしらね

 

Don't tell me you're sorry 'cause you're not

Baby when I know you're only sorry you got caught

But you put on quite a show

Really had me going

But now it's time to go

Curtain's finally closing

That was quite a show

Very entertaining

But it's over now

Go on and take a bow

 

残念そうな顔しないで。見え見えなの

残念なのはうまく騙せなかったことでしょ

でも出来のいいお芝居だったわ

本当にその気にさせられたもの

でも、これでフィナーレ

幕を下ろす時よ

なかなか魅せてくれたわね

楽しい時間だったわ

でも、もうそれも終わり

そろそろカーテンコールを済ませてよ


Oh, and the award for

The best lie goes to you

For making me believe

That you could be faithful to me

Let's hear your speech, oh

 

さあ、今年度のアカデミー賞

偽演男優賞はあなたに

私を本気で信じ込ませた

清廉潔白なる演技の妙を讃えて

では、受賞のお気持ちを一言どうぞ

 

How about a round of applause

A standing ovation

 

心から拍手を送るわ

スタンディングオベーションでね

 

But you put on quite a show

Really had me going

Now it's time to go

Curtain's finally closing

That was quite a show

Very entertaining

But it's over now

Go on and take a bow

 

But it's over now

 

まあ本当、見事な演技だったわ

ようやく熱も冷めたけど

さあ、もう終演の時間

いい加減、幕も下ろさなきゃ

素晴らしいお芝居だった

充分楽しんだわ

でも、これでおしまい

最後に、お客さんに頭を下げて

 

もう再演も無いから

 

この曲について

 自分に嘘を吐き続けていた恋人に対して、自分が見事に騙される程の名演技だったと、たっぷりの皮肉を込めて讃えながら別れを告げる。そんな曲のようです。

 

 恋人はどうも、この主人公の家まで謝りに来ているようですが、主人公はそれに対してとても冷淡です。この人が謝るのは嘘がばれたその時だけと知っており、そんなその場限りの謝罪の言葉など聴きたくないとピシャリと言い放ちます。ということは、何度も過去に嘘を吐かれ、そしてその嘘が露呈するというのを何度も繰り返しているのでしょうね。

 

 そんな、自分に対して幾度も嘘を重ね、その度上手く信じ込ませてきたこの相手に「名演技」と称賛の言葉を送り、一級の役者として讃えます。贈られる賞は「嘘つき男優賞」。なかなか辛辣な嫌味ですね。そして最後は役者らしくカーテンコールで観客……つまり自分に頭を下げるように言い放ちます。このカーテンコール、想像するだに惨めですね。散々裏切られ続けた主人公が望んだ、そんな哀れな幕引きをする役者の姿がこの Take A Bow (終幕後に役者がするお辞儀)というタイトルとなるようです。

 

 さて、この曲はリアーナ(Rihanna)によって2007年にリリースされた曲です。アルバム、グッド・ガール・ゴーン・バッド(Good Girl Gone Bad)に収録されています。


Rihanna - Take A Bow

 サウンドの耳触りが良く、曲の出だしなんかはそれこそ、式典で壇上に上がる時などにかかるとしっくりくるような気がするのですが、意味を理解してしまうと、とてもそんな時にはかけられない曲ですね。

 

 そしてまた、gleeの第2話で、自分に気があるように見せて結局はクィンと仲良くしているフィンに対し、レイチェルがこの曲を歌っています。

Take a Bow Lea Michele Glee S01E02

 この曲が使われたシーンで「あ、gleeってこう言うコンセプトのドラマなんだ」と初めて気づいた方も多いのではないでしょうか。この曲より前のシーンでは、gleeクラブとして歌うべくして歌っているという展開でしたが、この曲で初めてミュージカルっぽく「何故か突然歌いだす」という演出が使われました。

 

訳、言葉について

 まずタイトルの Take a bow は、前述の通りカーテンコールの際に役者が一斉にお辞儀をするあの行為そのものの事を指します。幕が下り、役者が並んで、この「Take a bow」の掛け声で一斉にお辞儀します。今回の曲においては、このカーテンコールの時の行為になぞらえて、自分に頭を下げろという言っていると思われます。
 アメリカ人にお辞儀の習慣は無いと思われている方もいらっしゃるようですが、無いわけではありません。そもそも bow だけでお辞儀を意味する言葉ですし、正装の紳士が被っている帽子を取って会釈するシーンは何となく覚えがあるのではないかなと思います。ただ、その行為の意味としては、かなり畏まった印象があるそうで、とてもフォーマルな物のようです。

 

 2番に突然 Sprinkler が出てきて、これは何かなと大分頭を悩ませました。勿論、普通にはあの水を撒くスプリンクラーなのですが、それが何故このタイミングで歌詞に出てくるのかが分かりませんでした。
 そもそもSprinkleが「撒き散らす」という意味なので、最初にパッと思い浮かんだのは、演劇舞台に例えた曲らしく、銀紙吹雪を撒き散らす装置の事を言っているのかとも思ったのですが、どうも一般的にはあの装置をSprinklerとは呼ばないようで。
 そうなると、恐らく庭の芝生に水を撒くあのスプリンクラーなのかなと。歌詞からするとこの相手は主人公の家の外で立ち尽くしているので、そこでスプリンクラーが回り出したら相手はずぶ濡れになります。だから、そうならないうちにどこかにいなくなって頂戴と言っている……ということでしょうか。
 ※アメリカでは、庭にスプリンクラーを設置している家庭は思いのほか多く、4世帯のうち1世帯程度の割合で設置されているそうです。

Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

Scarborough Fair|Canticle / Simon & Garfunkel

 

Lyrics&訳

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

あんた、スカボロー市場に行くのかい

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あの街に住んでる奴を思い出すな

あの時、あいつは俺にとって本当の──

 

On the side of a hill in the deep forest green

Tracing of sparrow on snow-crested brown

Blankets and bedclothes the child of the mountain

Sleeps unaware of the clarion call


──深い森の中に丘が在ってな。その脇に

雪の上にスズメの茶色の足跡と

山のように積まれた毛布とシーツ

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to make me a cambric shirt

Parsley, sage, rosemary and thyme

Without no seams nor needle work

Then she'll be a true love of mine

 

……服を誂えてくれって、伝えてくれないか。あいつに

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

縫い目も縫い留め無い奴でな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

On the side of a hill in the sprinkling of leaves

Washes the grave with silvery tears

A soldier cleans and polishes a gun

Sleeps unaware of the clarion call


──木の葉がばらついた丘の脇には

墓があるんだ。銀の涙で磨かれたな

そこで兵士が銃の手入れをしてる

時間が眠っちまったみたいにそのままだ

 

Tell her to find me an acre of land

Parsley, sage, rosemary and thyme

Between the salt water and the sea strands

Then she'll be a true love of mine

 

……土地を見つけるよう、伝えてくれないか。1エーカーほど

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

海と波打ち際の間にな

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

War bellows blazing in scarlet battalions

Generals order their soldiers to kill

And to fight for a cause they have long ago forgotten


──真っ赤に燃え上がる大軍。戦争さ

指揮官が兵士に、人殺しを命じるんだ

またいつか忘れちまう、そんな程度の理由でな

 

Tell her to reap it with a sickle of leather

Parsley, sage, rosemary and thyme

And gather it all in a bunch of heather

Then she'll be a true love of mine

 

……刈入れ作業は、皮の鎌でやるよう伝えてくれないか

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

刈り取ったら集めて、ギリュウモドキの束の中に

それが叶うぐらいなら、あいつともきっと──

 

Are you going to Scarborough Fair

Parsley, sage, rosemary and thyme

Remember me to one who lives there

She once was a true love of mine

 

スカボローの市場に行くんだろ

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム

あそこに居るあいつを思い出すよ

あの時、確かに彼女は俺の

 

この曲について

 皆さん、一度はどこかで聴いたことがあるであろう有名な曲だとは思いますが、まさかThe Weightより理解に苦しむことになるとは思いませんでした。有名な曲だからと思っていざ訳してみると、具体的なことは何一つ語られておらず、抽象的かつ突拍子もない言葉が連ねられています。さて、どう読み解いたものでしょう……

 

 とりあえずまず最初に押さえておくべき前提として、この曲は単にスカボローフェアと呼ばれることが多いですが、実際はスカボローフェアと言う寓話めいた古い詩と、カンティクル(Canticle(祈りの歌))という詩の二つをミックスして出来ております。

 

 この本来のスカボローフェアは実際にはもっと長く、そして詩の中に出てくる言伝も、一方通行ではなく双方向で行われるという構成となっています(参考資料:Wikipedia)。内容としては、お互いに無理難題を吹っ掛け、それができなければ恋人じゃない……と相手に伝えるといったもので、意味は理解できるけれど意図が理解できない不思議な詩になっています。

 

 一方で、それに重ねられたカンティクルの方は、この詩だけを切り取ってみれば比較的意図は明快かもしれません。人が訪れる様子の無い思い出の場所、兵士、墓、軍曹、大軍といった不穏なキーワードが並んでいます。こちらも具体的に主人公や恋人の身に何があったのかとか、今どうなっているという描写は有りませんが、少なくとも想いを馳せている方向性は感じ取れます。

 

 となると、どうもこの二つの詩を混ぜ合わせることで、先ほどの不可思議で意図の読めないスカボローフェアの詩に想いの方向性を与え、また歌詞内の言伝が一方向のみとなるようにアレンジすることで、遠き日と人を思う複雑な心情を表そうとしたのがこの曲では無いかなと思えてきます。
 実際、この曲はスカボローフェアとカンティクルが同時並行で複雑に歌いあげられており、聴くと何だか走馬灯のように、懐かしさ、やるせなさ、諦め、一縷の望みといった、まとまり無く絡み合う正負の想いが浮かんでは消えていく様を見ているような気分になります。

 

 さて、この曲はサイモンとガーファンクル(Simon & Garfunkel)によって1966年にリリースされた曲で、この曲中にもある謎の言葉「Parsley, sage, rosemary and thyme」という名のアルバムに収録されています。サイモンとガーファンクルと言えばこの曲と言う方も多いのではないでしょうか。


Simon & Garfunkel - Scarborough Fair/Canticle (Audio)

 この曲は小さい頃からなんとなく知ってはいましたが、まさか今になってこんなに頭を悩まされるとはつゆも思いませんでした。更新が遅れたのはこの曲のせいです(笑)

 

訳、言葉について

 この曲で一番頭を悩まされるのは、やはりParsley, sage, rosemary and thymeでしょう。意味は勿論そのまま「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」です。
 最初は、スカボロー市場と言うキーワードから、主人公の相手は行商人か何かで、これらのハーブを売り歩いているのかと思ったのですが、後半のエピソードとは全く繋がりません。繋がったとしても、別の所で矛盾が出ます。

 

 そして、ああでもない、こうでもないと悩んだ末、この言葉には一切意味は無いのではないかと思うようになりました。というのも、日本でも昔から伝わる歌には意味不明な言葉が沢山あるなと思った為です。例えば

 

「夜明けの晩に、鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ」

「茶壺に追われてトッピッシャン 抜けたらドンドコショ」

「行きはよいよい 帰りはこわい」

 

 のように、内容そのもの、もしくは前後の詩との因果関係が良く分からない歌詞も日本にありますし

 

「イチジク人参山椒にしいたけ」

「一番初めは一宮、二は日光の東照宮」

 

 のように調子だけを優先した全く意味の無い歌詞と言うのもあります。もしかしたら、Parsley, sage, rosemary and thymeもそんな類の言葉なのかもしれません。

 

 また、ハーブは病気を祓う薬草としても使われていたので、言葉に発するだけでも魔除け効果のあるおまじないのようなものしれませんね。
※これも日本にも、桑原という地には雷が落ちなかったことから、雷除けのおまじないで「桑原桑原」なんて唱える風習がありますね。

Waving Through a Window / Dear Evan Hansen

Waving Through a Window / Dear Evan Hansen

Lyrics&訳

I've learned to slam on the brake

Before I even turn the key

Before I make the mistake

Before I lead with the worst of me

 

急ブレーキを覚えてしまった

まだ鍵すら回す前から

何かやらかしてしまう前に

無様な自分を晒す前に

 

Give them no reason to stare

No slipping up if you slip away

So I got nothing to share

No, I got nothing to say

 

目立つことはしちゃいけない

そっと居なくなれば失敗することも無いさ

そうだね、僕は誰からも相手にされてない

何か言葉を口にすることもない

 

Step out, step out of the sun

If you keep getting burned

Step out, step out of the sun

Because you've learned, because you've learned

 

離れろ。離れるんだ。陽の当たる場所から

火傷の痛みが残っているならな

急げ。急ぐんだ。陽の光の外へ

だってそう学んだ筈だろ。解かっている筈だろ

 

On the outside, always looking in

Will I ever be more than I've always been?

'Cause I'm tap, tap, tapping on the glass

I'm waving through a window

I try to speak, but nobody can hear

So I wait around for an answer to appear

While I'm watch, watch, watching people pass

I'm waving through a window, oh

Can anybody see, is anybody waving back at me?

 

離れた場所から、いつも外を気にしている

これから先も、このままなのかな

ほら、ガラスを何度も叩いて

窓越しに手を振っているのに

話しかけてみても、誰の耳にも聞こえない

ここで答えが出るのを待つだけ

道往く人を眺めながら

窓の外から手を振ってみるけど

誰か見えないかな?手を振り返してくれる人はいないかな?

 

We start with stars in our eyes

We start believing that we belong

But every sun doesn't rise

And no one tells you where you went wrong

 

最初は目の中に光を湛えていたよね

最初は皆と一緒だって思ってたよな

でもいつも太陽が昇るとは限らないし

道に迷ったお前を導く人もいなかった

 

Step out, step out of the sun

If you keep getting burned

Step out, step out of the sun

Because you've learned, because you've learned

 

忘れろ。忘れるんだ。お日様の温もりなんて

そいつはお前の火傷をひどくするだけだぞ

隠れろ。隠れるんだ。太陽の届かない所へ

そうさ、解かってる筈だろ。解かってしまった筈だろ

 

On the outside, always looking in

Will I ever be more than I've always been?

'Cause I'm tap, tap, tapping on the glass

Waving through a window

I try to speak, but nobody can hear

So I wait around for an answer to appear

While I'm watch, watch, watching people pass

Waving through a window, oh

Can anybody see, is anybody waving?

 

皆の中に入れずに、ここから横目で眺めてる

これから先も変わらないのかな

窓のガラスを叩きながら

皆に向かって手を振ってるのに

上げてみた声だって、誰の耳にも届かない

ここで答えが出るのを待ちながら

道往く人達を眺めながら

彼らに手を振ってみるけど

見てくれる人も、手を振ってくれる人だって

 

When you're falling in a forest and there's nobody around

Do you ever really crash, or even make a sound?

When you're falling in a forest and there's nobody around

Do you ever really crash, or even make a sound?

When you're falling in a forest and there's nobody around

Do you ever really crash, or even make a sound?

When you're falling in a forest and there's nobody around

Do you ever really crash, or even make a sound?

Did I even make a sound?

Did I even make a sound?

It's like I never made a sound

Will I ever make a sound?

 

お前が森の中で木から落ちて、その時周りに誰も居なかったとしてだ

それは本当にまずいことなのか?実は物音一つ立っていないんじゃないか?

もう一度言うぞ。お前が木から落ちたとして、周りに誰一人居なかったのなら

それは何も無かったってことと同じじゃないか?誰もその音すら聞いていないんだ

もし仮にお前が怪我をしたとしても、誰も周りに居ないのだったら

それが一体何だって言うんだ?誰の何に影響するんだ?

そうさ、お前の身に何かあっても、誰もお前の周りにいないんだったら

世の中からしたらどうでもいいことだろ?誰一人気付けないんだ

僕は音すら立てていなかったのか

僕は音すら立てることができなかったのか

それってずっと、気付いてすら貰えてなかったってことか

いつか音を立てられるだろうか

 

On the outside, always looking in

Will I ever be more than I've always been?

'Cause I'm tap, tap, tapping on the glass

Waving through a window

I try to speak, but nobody can hear

So I wait around for an answer to appear

While I'm watch, watch, watching people pass

Waving through a window, oh

Can anybody see, is anybody waving back at me?

Is anybody waving?

Waving, waving, whoa-oh, whoa-oh-oh-oh

 

皆の輪から外れた場所で、何度も何度も皆を見ている

いつもこうだ。いつまでこうなんだ

何度もこのガラスを叩いてるじゃないか

ずっとこの窓から手を振ってるじゃないか

話しかけてみたって、声すら皆に届いてくれない

どうすればいいって言うんだ。何もできずに

ただ沢山の人が過ぎて往くのを眺めながら

皆に向かって手だけは振ってみるけど

誰にも見えない?誰も手を振り返してくれない?

たったの一人も?

誰か手を振り返してよ。誰でもいいから

 

この曲について

 最初にお断りしておきますと、この曲は「ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen)」という、アメリカのミュージカルの中の一曲ですが、僕はまだこのミュージカルを見たことは有りません(※昨年アメリカで公演されたばかりなので、当然なのですが……)。なので、オフィシャルサイトやWikipediaで得たあらすじしか知らない中での解釈となり、正直どこまで曲の内容を表現できているかが自分でも疑問なのですが、少なくとも自分にとってこういう曲に映った……という体で進めさせて頂ければと思います。

 

 まず、歌詞に I という一人称と、You、Weという二人称が入り混じるので、最初は主人公のエヴァン(Evan)から誰かに向けたメッセージなのかなと思ったのですが、歌詞とミュージカルの内容を見る限り、I も You も We も全てエヴァン自身を指していると思われます。つまりこの歌詞の向き先は全てエヴァンからエヴァンに向いているようです。

 

 少し劇の解説になりますが、エヴァンは社会不安障害を抱えており、周囲と上手く打ち解けることができずにいる17歳の少年で、そのセラピーの一環で自分で自分に手紙を出しているという背景があります。この曲中、一人称になったり二人称になったりするのは、恐らくこの前提があるからではないかと思われます。なので、心許せる誰かと一緒に居たいと思うエヴァンと、それは叶わないし叶えてはいけない望みだと諭すもう一人のエヴァンが入り混じって、こういった歌詞の運びになっているのだろうなと解釈しました。

 

 1番の1節と2節では、諦めつつもどこかで皆と一緒の輪の中に入りたいと望むエヴァンと、それを何度も試みて何度も酷く辛い目にあってきたことを覚えているエヴァン。この両者の葛藤が描かれているようです。そしていつも、人とは関わらないで済む道を最終的に選択してきたようです。

 

 しかし、2番の後、When you're falling in a forest and there's nobody around の部分ではそんな、人を避け続けてきた自分自身の存在価値に疑問が生じ始めているようです。ここの歌詞はかなり哲学めいた内容になっており、訳が正しいか今でも自信が無いのですが、多分「誰とも関わることが無いと言うのは、存在していないことと同じではないか?」という問いかけの例えだと思われます。これを4回も自問自答しており、どうもここでエヴァンは、このままでいることへの不安と焦りが急激に増しているようですね。

 

 そして最後は、窓を叩こうが手を振って呼びかけようが誰にも相手にされないことに絶望を覚え、しかしそれでも、誰でもいいから自分に気付いて欲しい、手を振って呼びかけに答えて欲しいと切望します。曲調こそ明るく軽快ですらありますが、その曲自体がエヴァンを置いてけぼりにしているような、そんなイメージが浮かぶ気がします。

 

 さて、改めてですが、この曲は2016年に公演が開始され、2017年にトニー賞のミュージカル作品賞を初め6部門で賞を獲得した、アメリカのミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」の中の一曲で、エヴァン役であるベン・プラット(Ben Platt)によって歌われています。

 


"Waving Through a Window" from the DEAR EVAN HANSEN Original Broadway Cast Recording

 

 現代のブロードウェイミュージカルの情報を収集するようなことは普段はしないのですが、たまたまOwl Cityが歌っているバージョンを耳にして一発で惚れこんでしまい、それからこのミュージカルにも興味が湧いてしまいました。
 ……とは言え、仮に本場まで見に行ったところで何言ってるか分からないと思うので、RENTやHairsprayみたいに映画化されることを待ち望んでおります。

 

 また、Owl Cityのバージョンは彼らしくテクノを取り入れた曲調になっています。大幅なアレンジという風ではないですが、オーケストラと比較して無機質で寂しい感じがところどころに出てると思います。

 


Owl City - Waving Through a Window (From Dear Evan Hansen) Lyrics [CC]

訳、言葉について

 Slamには「勢いよく叩きつける」というニュアンスがあります。その為、ブレーキの上に勢いよく叩きつける→急ブレーキを踏むということになるようです。

 

 Slip upは、「失敗する」という意味の熟語ですが、ニュアンスとしては「うっかりやらかす」という感じで使うそうです。

 

 同じくSlipを使った熟語でSlip awayとありますが、これは「席を外す」とか、「そっと抜け出す」という意味で使うようです。

 

 Step outは、「外出する」という意味と「急ぐ」という意味があります。今回はStep out of the sunとなっているので、陽の光が当たる所の外側に出ろ……つまり日陰に入れという意味と思われます。

 

 Look inは、じっと見ると言うよりは「ちらっと見る」という感じで使うようです。今回の曲ですと、皆の輪の中に入れないと思いつつも入りたいと願っているエヴァンの心情にマッチした言葉なのかなと思います。

 

 この曲のタイトルでもあるWavingですが、波を意味するWaveを動詞として捉えると「手を振る」という意味になります。なので、Waving Through A Windowで「窓越しに手を振る」となります。
 ※それにしてもこの窓はどういう窓なんでしょうね。エヴァンは左手を骨折しているので病院の窓なのか、皆のいる学校の教室の窓なのか、それとも心理的な例えなのか。

 

 そして多分、この曲を訳す上で一番の難関が、Do you ever really crash, or even make a sound? ではないかなと思います。そのまま訳すと

「君は本当にいつも墜落するのか、それとも音すら立てるのか?」

みたいな文章になって意味が分からないのですが、少し日本語固有のニュアンスを加えて「~と言えるのか」とすると

「君は本当にいつも墜落したと言えるのか、それとも音すら立てたと言えるのか」

となり、少し分かり易くなるのかなと思います。そこからさらにニュアンスを変えて

「君は本当にいつも墜落したと言えるのか、いやむしろ音すら立てたと言えるのか」

と解釈できるのかなと思います。そしてここは直前に、When you're falling in a forest and there's nobody around(君が森に落ちて、その時周りに誰もいなかったとしたら)という歌詞があるので、まとめると

「君が森に落ちて、その時周りに誰もいなかったとしたら、それは本当に墜落したと言っていいのか、むしろ音すら立てていないのと同じではないか」

となるのではないかなと思います。ここは本当に自信が無いので、違ってたらどなたか教えてください。

プロフィール

笹森茂樹

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